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【笠沙ミライ会議的エッセイ】バトンタッチ

こんばんは☽・:*

今夜の笠沙ミライ会議的エッセイ企画は 肝付 美加です___ ✍🏻

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昔、小浦のゴイババでウミガメの産卵を見たことがある

お日さまキラキラ降り注ぐ午後
左右からアーチのようにのびた草のトンネルをくぐりぬけると
そこはプライベートビーチ
金色に輝く砂浜と一面のマリンブルー

水面はお日さまを浴びてまぶしく輝き
穏やかな波音が響いていた日のこと

私自身が小さかったからか
驚きと衝撃が大きかったからなのか
今も記憶に残るウミガメは
まるで子牛ぐらいの大きさをしている

そして「どうぶつ奇想天外!」という番組でみた光景がすぐそばに繰り広げられている事実は
海遊びが大好きだった子どもにとって
これほどない興奮と高揚感だったことも覚えている

番組で学者さんが「ウミガメが産卵している時には騒がない」と説明していたので
ウミガメの横に座って少し観察した後
そっとプライベートビーチを後にした

翌日、再びゴイババへ向かった私が見たのは
ハエが群がる息絶えたウミガメの姿だった

魚が腐ったような独特の匂いと、ハエの羽音

空は前日のようにキラキラ輝いて
海も穏やかで波音も心地いいのに
ウミガメは死んでしまった

卵の穴は既になく
母ガメは海へ戻る体力が残っていなかったのかもしれない

その個体を大事にしていたわけでも
愛していたわけでもないけれど
少しだけ悲しくて、泣いた

「どうか、どうか、あの卵たちが大きくなって。また会いたいです。」

大人になり、ウミガメの生存率がとても低いこと
卵が全滅してしまうこともあると知り
生きることの大変さと残酷さを重ね塗られた

あの時のウミガメは死んでしまって
卵たちもどうなったのか確かめる術はない

今もゴイババには、ウミガメが産卵しにくるのかな

ただ、1つの命の終わりが
幼いヒトの子の死生観に影響を与えたことは事実だ

そして、私がこの記憶を文字にすることで
あの時のウミガメは、このエッセイを読んだ人の中でも
「在った」ことになる

命は巡る
ぐるりと周って、誰かへバトンタッチされ
別のものになって、次の世代へ渡される

ささいなことでも伝え合うと
細い糸が紡がれてあたたかいブランケットにもなるかもしれない

私は私の人生を生きているけれど
この人生は、繋ぐべき誰かの糧になるのかもしれない

見知らぬ誰かの何かに役立つかもしれない

それがウミガメの生存率ぐらい低い可能性だとしても
母ガメが命を繋げようと必死にもがいていたことを、私は知っている

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今週もおつかれさまでした😊

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