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60歳で整形しましたが何か? その5

ホテルまで一目散に歩く

 時刻は午後2時。JR船橋駅前は多くの人が行き交っています。昼間なので茶色いサングラスとマスクで顔を覆っていても誰も見向きもしません。何針も縫う二重全切開手術をしたなんて誰にもばれません。さすがに全身麻酔のダメージは大きく、足元がふらつきます。それと同時に空腹感に襲われました。喉もカラカラです。でも早くこの喧噪から逃れ、一人きりになりたい。食料と飲料は昨日のうちに仕入れてあります。ホテルに向かって一目散に歩きます。
 12分くらいかかり、ようやくおんぼろホテルに到着しました。フロントのおじさんと目を合わせることなくエレベーターに乗り込みました。軽く飲食を済ませ、鏡を覗き込んでみました。

ダウンタイムは一人で耐える

 鏡の中の私の目はくっきりしすぎるくらい大きな二重になっていました。まるで刺繍のまつり縫いのように片目20針くらい縫った黒い糸がくっきり見えています。あまりにもグロいので、この時点の画像はアップできません。一時間くらい経つと、ジンジンと脈を打つような痛みがやって来ました。覚悟はしていたものの、思わず声が出てしまうくらい痛くなってきます。薬を飲んで横になりました。冷凍庫がないので、冷えピタで冷やすしかありません。おでこに貼っても効果がない、直接患部を冷やしたほうが良いと事前に情報を得ていました。でも粘着質の冷えピタを直接傷口には貼れません。おでことこめかみに貼って痛みに耐えました。この初日の苦しみをパートナーには見せたくなかったのです。一人でホテルに泊まって正解でした。
 しかし、なんだかこのホテル、お化けが出そうな雰囲気なんです。シーツを変えてもらったのに不快なじっとり感。ときおり聞こえてくる変な物音。明日ももう一泊するかと思うと気が滅入ります。

一日早く帰宅の途へ

 ようやく薬が効いてきた午後八時頃、大阪に出張しているパートナーから電話が入りました。仕事が早く片付いたので、予定より早く明日には東京に帰ってくるということでした。明日になれば、この激痛も和らぐに違いありません。私も予定を一日早めて帰ることにしました。もっときれいで快適なホテルであればその必要もないのですが、とてもゆっくり休める環境ではなかったのです。
 案の定、じっとり湿気を含んだベッドでは安眠することができませんでした。翌朝、逃げるようにチェックアウトしました。サングラスをかけてマスクをしていれば、むごい傷跡に気が付く人はいません。電車を2本乗り継ぎ、駅前の駐輪場に停めてあった自転車に乗って帰宅の途につきました。
 自宅に着くとすぐに冷凍庫に直行。アイスノンと冷凍してあったゼリーで患部を冷やします。冷やすと幾分、楽になりますがまだ2日目。痛みはジンジン、ズキズキと襲って来ます。

3日間は冷やす、とにかく冷やすべし


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