純粋な人達
風鈴ちりんちりん
気づかない程度の傾斜角度の床を赤や黄色、青や茶色のビー玉が静かに転がっていく。
ビー玉の質量や素材によって転がるスピードや転がり方にはっきりとした違いが出る。
やがて全てのビー玉は壁にぶつかり思い出したように方向を変え、隅っこの方で横一列に揃った。
じっくり ぼんやり じっくり ぼんやり
輪郭を成したり 成さなかったり。
何度かビー玉を転がしたがとうとうビー玉の回収が面倒になり隅に並ぶビー玉群を眺めるだけの時間が経過していた。
ビー玉に自分を投影して目を瞑ったら涙が出た。
私は生きるのだ。とにかく真っ直ぐ生きるのだ。
世の中の荒波に揉まれ、もがき苦しみながら。
細々とした声で弱音を吐き醜い姿を晒しながら。
どこに行くのかもまるで分からない。
私の歴史にはろくなものがない。トンネルに入ったら列車の車窓から見る闇のように具体性はない、しかし決して明るくはない過去が流れていく。
進んでいるのか、止まっているのかもわからない
それでも生きるのだ。
瞬間の煌めきを求めて生きるのだ。
良き仲間ができた。
皆んなで同じ列車に乗って踊り狂った。
普段は行けない場所。1番前の車両まで皆んなで踊りながら進んで行った。車窓からは意識的に視線を逸らして。
運転士が恐ろしくニヒルな表情で笑っているのに耳を塞いで。
涙が床を伝って、傾斜に従って、
つーーーーーーと涙は行進する。
やがて涙はビー玉にたどり着いた。
ビー玉は水溜りの中に佇んだ。
僕は微笑んだ。
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