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ところてん日和

物語やエッセイの食べ物が出てくるシーンが好きである。

ラピュタのトースト
ハイジの白パン
向田邦子さんのにんじんごはん

食べ物が出てくると、物語にしろエッセイにしろ、生き物としての現実味や親近感がわく気がするし、その食べ物を自分で再現してみようとするのも楽しい。この自粛生活の中では、『ぐりとぐら』のカステラを再現したご家庭も多いのではないだろうか。

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最近で、心をつかまれたのは、江國香織さんのところてんだ。
『やわらかなレタス』というエッセイ集の『甘味屋さんの変わり種』というエッセイに、ところてんが出てくる。
ところてんが好きで、ご自身の小説の中にもところてんが登場する場面があるという江國さん。ところてんがパックで売られていることを知らずに、ところてんは、「甘味屋さんの変わり種」だと思っていたことがあるのだそう。

私は、甘味屋さんでところてんを注文したことがなかったので、むしろ新鮮に思えた。

ところてんは、私の中でわりと好物な部類に入る食べものだ、ということをこのエッセイを読むまですっかり忘れたいた。

子供の頃、夏の日のお風呂上がりに、パジャマ姿でところてんを美味しそうにすすっていた両親を思い出す。ところてんに青のりを入れる派、からしを入れる派で毎回もめている両親を見るのが好きだった。子供ながらにも本気でもめてはいないのはわかっていて、何度も同じネタを主張しあうほど、彼らにとっては重要なことなのだと思った。どちらも入れればいいのに、とも思っていた。
私自身もところてんをよく食べた。兄弟の中でも私は、特にところてんへの愛が強かった気がする。

小学生のとき、夏休みの宿題に「克服したい嫌いな食べ物」を書くという項目があった。席が近くの男の子が「ところてん」と書いていたのが見えて、仰天したのを覚えている。
ところてん!!食べられなくても、なんの問題もなさそうな食べ物を?と。そこで期待されているのは、にんじんとかピーマンといった回答だと思うけどなあ、と失礼ながら(男の子にも、ところてんにも失礼!)、余計なお世話ながら、思ったのだった。
内気な子供だったおかげで口には出さずに済んだけれど。

そういえば、バンコクのスーパーではところてんって売っているのかしら?
意識してみたことがなかったけれど、おでんやもずくも売っているスーパーだから、ありそうな気もする。今度みてみよう。
常夏のバンコクなら、毎日がところてん日和だ。

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