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父の日の定番

今年の父の日のプレゼントは、ゴルフボール。去年と全く同じものだ。
姉と共同でプレゼントする。具体的には、父からリクエストを聞き出した姉がプレゼントを手配し、私は後日、費用の半額を姉に渡すというだけだ。
父の日が近づくと、たいてい姉から父のリクエストのお知らせが来る。
少し前に「お父さん、今年も『安定の』ゴルフボールだってよ」
と姉から連絡が来た。

父の日、母の日ともに、いつからかリクエスト制になって姉と共同で贈り物をすることにしている。サプライズよりも実用性。贈る側も選ぶ手間が省けて、悪くない決まり事だと思っている。
父は、ここ数年、ポロシャツやキャップ、ゴルフボールなどゴルフグッズの補充に父の日を利用しているようだ。リクエストのネタが切れると、とりあえずゴルフボールにしている感もある。
値が張るゴルフクラブなどは、弟が買ってあげているみたいだけれども、そこは、男同士のカッコつけ合い、と都合のよい解釈をしておく。

義理の父母には夫経由でリクエストを聞いてもらうこともあるが、たいていは欲しいものがないというので、私が選んだものを贈っている。
実の母のように贈り物にさえ、文句を言ってくるようなことはなく、喜んでくださっている。


いつだったか、父は「お父さんの分はいいから、母の日だけはよろしく」と言っていた。
てっきりそれでいいんだと思って、言われた直後の父の日のプレゼントを用意していなかったら、どうやら、父の日の当日、父は車の音がするたびにソワソワしていたそうだ。それまでは、いつも宅急便でプレゼントが届いていたから。

何も届かないであろうことに気づいた母があわてて、プレゼントを買いに出て、私たちから事前に預かっていたことにしてくれたらしい。夕食時にさりげなく、いつもと違う和の陶器をビール用に出して、娘たちからのプレゼントだということにしたのだそう。

父は、母が買ってそういうことにしたのをなんとなく察したかもしれない。
そういう勘はいい人なのだ。そして、そのことを口に出すこともなかっただろう。

このときの母の対応には驚いた。

普段の母のイメージだと、こういう場合、父に向かって「あら、残念。今年は誰からもプレゼントが届かなかったね!なんでだろうね?母の日は届いたのに」と大声で何度も言いそうな人なのだ。
そう、母にはデリカシーに欠けるところがある。思ったことをなんでも口にしてしまう人。本人には悪気がないみたいだから、やめることはない。

その母が、ときには、こういう気遣いをすることもあるのだ。
親たちは私が思っているよりもずっと、カップルとしてうまくいっている2人なのかもしれない、と思った。
のちに私たちには「全くあんたたちは!ちっとも人の気持ちがわからないんだから(怒)」と言ってきたけれど。そちらの方が母らしい。

今でも帰省をするたびに、そのグラスで父とビールを飲む。


最近の何年間かは意味不明に、私からの連絡もプレゼントも拒否を続けてい母からも、今年は久しぶりにおねだりがあった。そのリクエストは姉経由で聞いたのだけれども。

リクエストはイヤホンだった。難聴をカバーする機能があるものだそうだ。母も歳をとったものだ。
母がどういう理由でへそを曲げたのか、何をきっかけに機嫌を治したのか相変わらずわからなかったけれど、それでも、また母のリクエスト制が復活してよかったと思っている。

来年の父のリクエストはなんだろう。また、ゴルフボールと言ってきたら、久しぶりにこちらから、別のものを提案してみようかと思っている。

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