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更なるパンデミック対策予算は不要である(ヘリテージ財団の記事)

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 2022年1月18日にヘリテージ財団は、パンデミック対策予算に関する記事を発表した。内容は、パンデミック対策ですでに6.6兆ドルの予算を計上したにも関わらず、議会で更なる予算案が検討されていることから、現在の予算状況及びパンデミック対策予算の影響を概観するものである。巨額予算がアメリカのインフレ加速と労働者不足を招いていることは過去の記事で何度か取り上げさせていただいたが、同じ過ちを繰り返そうとしている。今後のアメリカ経済の動向を見ていくうえで参考になると考えられることから、その概要を紹介させていただく。

↓リンク先(9 Reasons Not to Pass Yet Another Federal COVID-19 “Relief” Spending Package)
https://www.heritage.org/budget-and-spending/commentary/9-reasons-not-pass-yet-another-federal-covid-19-relief-spending

1.本記事の内容について
 ・ここ2年で約6.6兆ドルのCOVID-19パンデミック対策予算が組まれたが、更なる予算案を可決しようとする動きが見られている。議会は本来あるべき水準よりも多額の予算を計上しており、このことがインフレやサプライチェーンの問題などを引き起こし、更には労働者不足まで招く結果となっている。これ以上の予算案を可決するべきではない理由は、以下の9項目である。

① 未執行予算
  連邦予算委員会の調査によると、1兆ドル近くの予算が未執行である。現在検討されている予算案は、2000億ドルであり、更なる未執行予算が積み増しされることになる。

② ビジネスへの悪影響
  全米自営業者連盟の調査によると、12月におけるビジネス上の最大の問題が売上減少や金利等であると回答した企業は5%だった。むしろ政府の政策の方が問題視されており、10%は政府の新たな規制、14%は増税、22%はインフレを最大の問題であると回答した。政府の予算案は、COVID-19対策の名目で各種規制を課すものであり、ワクチンパスポート、ワクチン義務化、学校閉鎖、検査義務化、濃厚接触者の長期間の隔離などの方がむしろ悪影響である。

③ インフレ圧力
  政府の過度な支出は供給を上回る需要を生み出し、インフレを加速させている。また、手厚い失業給付により労働力が不足し、モノやサービスの価格に転嫁され、更にインフレが進行するという悪循環に陥っている。

④ 労働力不足
  巨額な財政政策により、労働者不足が加速している。360万人分の求人があるにもかかわらず、パンデミック前と比較して290万人も失業者が多くなっているが、これは、手厚い失業給付のためである。失業にインセンティブを与えれば労働する人は少なくなり、結果としてサプライチェーンの混乱や物価上昇が引き起こされることになる。

⑤ 無駄遣い
  過度な予算は、不正、誤用、無駄遣いを生む。不適切な支出率は、2019年に2.9%だったものが、2021年には7.1%にまで増加した。この一番の要因は、毎週600ドルを支給する失業給付である。失業給付は十分な要件確認が行われていないことから、不正受給がはびこっており、ヘリテージ財団の調査によると、少なくとも40%以上(3570億ドル)が、失業していない人々に支払われている。

⑥ 縁故主義
  政治家が受益者を恣意的に選択することは、非効率かつ不公平である。一部政治家は、飲食店、事務、ライブ会場などに支援金を拠出することを主張しているが、ビジネスへの影響は政治家が考えているほど容易ではない。
例えば議会は540億ドルの緊急保育予算を計上したが、これは2019年度の保育産業全体の収益を上回る規模である。20の州政府は半分以下しか支出することができておらず、13の州は全く予算を執行していない。保育産業の疲弊は、非効率な官僚機構が、企業の不足、従業員の不足、パンデミック対策の規制などに対処できていないことが要因である。

⑦ 無意味なマスクの無償提供
  パンデミック初期段階のように、感染症の不確実性が大きい場面でマスクを無償提供するという政策は理解できるが、現在のようにCOVID-19の知見が得られ、マスクが流通するようになっている状況下においては、無駄かつ非効率である。
  バイデン大統領は、5000万個のテストキットを3週間前に調達したとしているが、家庭に届くまでには数週間から数か月を要すると見込まれており、N95マスクは、オミクロン株のピークが大きく過ぎてから届くことになる。また政府が大量調達したことにより、市中の在庫が枯渇するだけでなく、価格も高騰することになり、一番必要な時に入手できないことになる。
  現在N95マスクは1枚当たり1ドルで入手可能となっており、巨額な予算をかけて非効率な一括配布を行う必要はない。更に30%以上のアメリカ人は、個人の選択としてマスクを着用しないとしており、こういった人々への配布は無駄になるだろう。

⑧ 教育の機会喪失
  義務教育を受けている500万人の児童が、不必要なロックダウン、質の低いオンライン授業、孤立に苦しめられている。このことの影響は長期にわたるものと見込まれており、メンタルヘルスの悪化や将来の年収などに大きな影響を与えることになるだろう。

⑨ 州政府への負担
   連邦予算委員会の調査によると、州政府は連邦政府のCOVID-19予算のうち、1250億ドルを未執行にしている。2021年第3四半期までの税収は、2019年度比で1470億ドル(17%)の増額となっている。これ以上州政府に予算を配賦しても執行することができず、ワクチン義務化や学校閉鎖などの無駄な政策にインセンティブを与えることになる。

2.本記事読後の感想
  アメリカが羨ましくなる内容である。6.6兆ドルの予算に飽き足らず、更に財政政策を検討できるという政治状況が何とも羨ましい。ただ現在のアメリカの状況においては、これ以上の財政政策はあまり利益をもたらさないことから、これはこれでまずいのだが。このままいくとインフレが終息せず、利上げなどによる金融緩和が抑制され、却って経済が停滞するようになるのではないだろうか。いずれにしても、財政と金融のちぐはぐさなどがうまく解消されることを望みたいものだ。
  岸田内閣は、医療対策やワクチン接種などについての話は遅いものの、財政プライマリーバランス黒字化といったことだけは対応が早い。日本はいつまで財政均衡主義の呪縛にとらわれ続けるのだろう。現在のインフレであれば、30兆円ぐらいの補正予算を追加しても、何ら問題ないと思われる。感情の議論ではなく、数値の議論をできるようにならなければ、日本に未来はない。こういった終末論的な言論をばらまく政治家や言論人に惑わされてはならない。  

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