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ヨーガ(ヨガ・瑜伽)ってなに?

仏教のヨーガ(ヨガ・瑜伽)と言えばやはり『瑜伽師地論』。タイトルに「瑜伽」という言葉があるくらいですから、仏教ヨーガ(瑜伽)の代表的な論書です。これは4世紀のアサンガ(無著)が兜率天に上がってマイトレーヤ(弥勒菩薩)から教えてもらったという説があるので、ヨーガの定義に関する部分を二人の掛け合い風にアレンジしてみました。チベット語の『瑜伽師地論』(rnal 'byor spyod pa'i sa)と国訳一切経の『瑜伽師地論』を参照しています。

無著「弥勒師匠!今日もまた来ましたよ!」

弥勒菩薩「また来たんかいな。君も物好きやなぁ」

無著「今日はヨーガについて教えてください!」

弥勒菩薩「ヨーガ?あぁ、あれやろ?頭で逆立ちとかするやつやろ?あれは20世紀になってから西洋の体操やらボディビルやらを参考にして創られたもんらしいし、そんなん、わし知らんで」

無著「20世紀になったらそんなヨーガが出てくるんですか!?てか今は4世紀なのに、なんでそんな未来のこと分かるんですか!?」

弥勒菩薩「無著くん、わしを誰やと思ってるねん?弥勒やで(キリッ)」

無著「し、失礼しました!今日は仏教のヨーガについて教えて欲しいんです!」

弥勒菩薩「それやったら、まぁ、ええよ」

無著「よろしくお願いします!ヨーガって何なんですか?」

弥勒菩薩「えらいストレートにきたなぁ。まぁ、嫌いやないけど。ヨーガには4つの側面があるねん」

無著「4つの側面?」

弥勒菩薩「そう。信と欲と努力と方便や」

無著「すでに分かりません!」

弥勒菩薩「焦るな焦るな。ひとつづつ説明するから」

無著「よろしくお願いします!」

弥勒菩薩「相変わらず、暑苦しいやつやなぁ・・・まずは、信についてやけど、信には2つの側面と2つの基盤があるねん」

無著「なるほど!分かりました!」

弥勒菩薩「いや、まだ説明してないからね・・・信の2つの側面っちゅうのは、完全に信頼する側面と、心にわだかまりを持たない側面のことや。ほんで2つの基盤っちゅうのは、現象と論理吟味による基盤と、人格への信頼による基盤のことや」

無著「なるほど!」

弥勒菩薩「つまり、現象の観察と論理による分析に基づいて、あるいは人格を信頼することに基づいて、物事について完全に信頼して心にわだかまりを持たないことが信やな。せやから、無批判的に信じることとは全然違うわけよ」

無著「なるほど!欲についてお願いします!」

弥勒菩薩「欲にも4つの側面があるねん。一つ目は、成し遂げるための欲。解脱を成し遂げたいって気持ちを生じさせることやね。二つ目は、徹底的に問うための欲。知らんことについて聞きたいって気持ちと、そうするために、清らかな行いを実践してヨーガを知っとる人らのとこに行きたいって気持ちを生じさせることやね」

無著「なるほど!」

弥勒菩薩「ほんで三つ目は、徹底的に下積みするための欲。戒を守って清らかな行いをせないかんから、正しい食事の量を知って、あんまり寝えへんようにして、思慮深い行いをもっとしたいって気持ちを生じさせることやね」

無著「zzz・・・すやぁ・・・zzz」

弥勒菩薩「早速寝とんかい!」

無著「すみませんでした!!」

弥勒菩薩「かなんな、ほんまに・・・四つ目は、継続的な努力のための欲。常にそして謙虚で丁寧に陶冶することと、瞑想の修行をしたいって気持ちを生じさせることやね」

無著「なるほど!」

弥勒菩薩「元気だけはええな。欲の4つの側面言うてみ」

無著「え・・・」

弥勒菩薩「今教えたばっかりやのに覚えてないんかい!」

無著「すみませんでした!」

弥勒菩薩「成し遂げるための欲!徹底的に問うための欲!下積みを徹底的に成すための欲!継続的な努力のための欲や!」

無著「はい!分かりました!」

弥勒菩薩「ほんまかよ・・・」

無著「続きお願いします!努力について!」

弥勒菩薩「努力にも4つの側面があんねん。一つ目は、聴聞のための努力。知らん事柄について聞いて、聞いた事柄を完全に会得しようとする熱意と鍛錬がたゆみないことやな」

無著「はい!私のことですね!ソワソワ」

弥勒菩薩「え・・・?」

無著「え・・・?」

弥勒菩薩「二つ目は、思惟のための努力。独りで隠遁しに行って、聴聞した事柄の意味について考えて、分析して、徹底的に吟味する熱意と鍛錬がたゆみないことやな」

無著「なるほど!隠遁してきます!じゃ!」

弥勒菩薩「待て待て!まだ説明終わってへんがな!」

無著「すみません!」

弥勒菩薩「落ち着きのないやっちゃな・・・とりあえず、三つ目は、瞑想のための努力。心を完全に落ち着つかせて、集中・安定の瞑想と、観察・分析の瞑想をする熱意と鍛錬がたゆみないことやな」

無著「はい!私のことですね!ソワソワ」

弥勒菩薩「え・・・落ち着き・・・しかもそれ2回目・・・」

無著「え・・・?」

弥勒菩薩「四つ目は、障害になる事柄を完全に払拭するための努力。一日中努力するようにして、歩く瞑想と坐する瞑想をして、障害になる事柄を払拭するように心を完全に陶冶する熱意と鍛錬がたゆみないことやな」

無著「なるほど!手段についてお願いします!」

弥勒菩薩「手段にも4つの側面があんねん。まずは戒をちゃんと守って感覚器官を制御せないかん。ほんで、物事を忘れへんように徹底的に心に留め置く、つまり念ってやつやな。ほんで、念を入念に・・・」

無著「え・・・洒落・・・」

弥勒菩薩「無著くん。今のは忘れてええよ。で、念をしっかり保って諸々の善い行いをする。ほんで、念を保ったまま心を集中・安定させて勝れた智慧について観察・分析する」

無著「なるほど!」

弥勒菩薩「こんな感じでヨーガには信・欲・努力・手段それぞれに4つの側面があるから合計16の側面があるわけよ。せやからまとめると、得たことのないことを得て、理解していないことを理解して、体得していないことを体得するために、為すべき事柄を完全に信頼して、その為すべきことのために善い行いをしたいと思って、四六時中勇猛果敢に努力して、その熱意で手段を実践するのがヨーガっちゅうこっちゃ」

無著「バターン!・・・イタタタ・・・ふぅ・・・ふぅ・・・」

弥勒菩薩「・・・って、ちょちょっ・・・何してんの?」

無著「いや・・・頭で逆立ちするのが難しくて・・・」

弥勒菩薩「そっちのヨーガかよ!!」

おしまい


この作品は「小説家になろう」(https://ncode.syosetu.com/n6845hk/)にも掲載しています。

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