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遍路記録⑤13~17番札所/お接待に感謝

さて前回無事は、12番焼山寺をお参りして
一晩あけて次の13番さんへの道のり
スタートした朝まででした。
今日はここから。

玉ケ峠(たまがたお)超え

旅館から登山口までのコミュニティバスを降りた
そのスタート地点から
同じように歩き始めた方々が幾人かいっしゃいました。
急に山に分け入る感じでしたが、
みなさんのお陰で道に迷う心配もなく
お天気もよく意気揚々と歩き始めたのです。

わくわくの登り口

この急なお山は、なんだかとても楽しくて、
勾配はきつめですが、木々の間の細い山道、
ところどころ根っこがむっくりしていたり
自然の中でこういう道は大好物です。

でも、7時半ごろから歩き始めたと思いますが
写真を見ると、8時21分の段階で、
もう林道に出てしまいました。

林道

車が通る舗装された山によくある
片方が山の斜面、片方にガードレール
中央線もないくらいのアスファルトの下り坂になりました。

桜がキレイな3月末

このあたりから、山の下の方に
川が流れているのが見えました。
あそこまで下りるのかあ…と、
ちょっとびっくりしますが
山の斜面にはテンテンと民家も見えて
結局、思うより近かったのですが。

随分遠そうにみえますが…

そしてなぜかまた、この少し前から
スタートした時は
あんなにたくさんいらしたお遍路さんが
あたりには誰もおらず、わたし一人きり。
ですから、心おきなく、
また鼻唄なぞ歌いながらあるいておりました。

その後、8時半の写真には休憩所を撮っています。
お遍路小屋・神山休憩所、これはお遍路地図にも載っています。
ここで野宿する方もいるのあもしれません。
このあたりでスタート地点から4㎞くらいでしょうか。

神山休憩所
見晴らしのよい休憩所です

その後、9時15分には、先に山の上からながめた大きな川、
鮎喰川沿いまで下り切っていました。

そしてこの辺りには、かわいい案山子人形がいっぱいです。
「焼山寺からの坂道お疲れさまでした。
大日寺まで約12.5㎞。お気をつけて」
と書いた看板と共に
お遍路さんを迎えてくれます。

阿川のかかしとかいてありました。

かかしのさと阿川
よく聞く旅館の横にもかかし

この辺りは、もう山ではなくて、
生活感もでてきます。
バス停もあります。

川は蛇行していますが。
それをショートカットするように
潜水橋のような橋を渡り、
川をまっすぐ横切ります。

若者っぽいかかしさん
四国の川は透明度が高いです

この時に、河原におりますが、
ここがまたとても美しく。
川は澄み切っているし、
所々の岩もきれいで、
水をさわりながらちょっと休憩しました。

ここで9時50分くらいでした

さらにこの後は、まだしばらく川沿いの
舗装道を進みます。
でもお店などはありません。
車も通るし、ちょっと飽きてきます。

その先で、川のたもとにトイレと書いた看板を発見。
このトイレは地図に載っていない!助かる、
メモしておかねばと思い、写真を撮りました。

そこは「徳島バスの長瀬」バス停のすぐ横でした。
河原に降りた所に
公園にあるようなトイレが設置してありました。

ありがたい看板
覚えておきます「長瀬」

ここで10時24分でした。
その後、広野郵便局や、小学校、小さな集落を通ります。
バス停もずっと続いています。
そうえいばこのバスをつかって次に行くと言っていた
同じ宿のお遍路さんもいました。

この段階で、多分10㎞らいあるいてきたでしょうか。

この辺りから、ちょっと疲れてきした。
気持ちが疲れると言った方が正しいですが。
山道は全く平気なのですが
トラックや、大きな車がすれすれを走っていく
ストレスにさらされます。
途中、少しでも川に近づくとホッとしますが
離れたりくっついたりする21号線をひたすら歩きます。

歩道は、随分細い所もあります。
さらに、お天気が良いのはありがたかったのですが
アスファルトの照り返しと排気ガスで暑い…

何度も、このカーブすぎたら
「もう次のお寺が見えるのではないかなぁ」と思っては
「まだかぁ」と、がっかりしながら歩きます。
まだ、着くはずはない所なのですけれどね。

お遍路の旅の中で、
他にも歩道を長く歩いた所もあるにはありますが
思い返せば、実はここが一番きついかったかもしれません。

そして2回目という気のゆるみというか、
その先が変わっているからこそダレると言いますか、
そんな影響もあったのかもしれません。

そんな気分のお陰で
写真も一枚も撮っていませんでした。

車が行き交う、バイクが追い越していく…
ぼんやり気味に、ひたすら足を進めておりました。

喉が渇いてくるけれど、自販機も見当たらないので
持参しているお水の残量を考えて、
もう少し先にあるコンビニまではセーブ気味にしながら、
ちょっとおやつをかじったりしながら歩きました。
休憩する所もありませんし、
瞑想といえばそうなのか、
いやこれは単にぼーっしているだけなのか、
そんなことを考えながら歩いておりました。

しかしこの後!感動は是非声でも…音声配信はこちらから👇

ふいに現れた救世主

そんな中、原付バイクが一台、
すーっと、わたしを少し通り過ぎて、
目の前でとまりました。

歩道も細く、他には何もないと所です。
どうしたのかなと思いながらよく見ると、
さっき正面から、反対車線を走っていった
すれちがった原付バイクでした。

30代くらいでしょうか、男性が、
ヘルメットぬいで
わたしの方に歩いてきます。
手には小さなレジ袋をもっています。
わたしは会釈をしました。

そしたら彼は
「これ、お接待です。食べてください、どうぞ」と、
その袋を差し出してくれたのです!

もうびっくりしました。
中にはチョコレートのパンと、コーヒーが入っていました。
(音声配信では間違てお茶といってますが、
ペットボトルのコーヒーでした)

わたしは「さっきすれ違いましたよね」と伺いました。
そうしたら
「はい。歩いていらっしゃったから、
渡そうと思って戻ってきました」

もう泣きそうでした。
いえ実際、わたしは、目がウルウルしていたと思うのです。
わざわざ引き返してきてくれてのお接待です。
ありがたく、いただきます。

この頃になると、もういただく時には
ちゃんとこちらも手を合わせます。
合掌して「ありがとうございます」と
お坊さんみたいにいいます。
そしてその想いを、お参りの時に一緒に
お礼としても祈ります。

「じゃあ、気を付けて、がんばってください」と、
お兄さんはまたヘルメットをかぶって
逆方向に引き返していきました。

おかげで元気いっぱい

そこから、まだまだ車道がつづきました。
でも、もう、おかげでとても元気でした。

袋の中身は丸い形の
チョコレートがコーティングしてあるパンでした。
歩きながらムシャムシャかじりました。

甘味が体に丁度よくて、
「ありがとう・ありがとう・ありがとう・おにいさん」
ずっと思いながら歩きました。

お兄さんはもしかしたら、この道をよく通るのかな、
などと思いながら。

だからこの距離や車と行きかう辛さを知っているから
応援しようと思ってくれたのかな、などと考えながら。

そこから少し進むと
橋のたもとにモニュメント的な金属の何かと
祠のようなものと、神山町の案内、
そしてベンチがありました。
やっとそこで、少しの間だけ
そこで荷物を降ろしました。

11:18 枝垂桜が多いエリアでした

上写真は、この嬉しいお接待の前か後か
ちょっと記憶が曖昧ですが
日本一美しい枝垂桜の里ここは臼嶽 
本当に見事に咲いていました。
3月末が見ごろなのかもしれません。

さて、その後、まだまだ歩き
途中コンビニがあり、
やっとそこで冷たいものも補充して、
12時51分に、ようやく大日寺がみえました。

見えたー

5時間ほど歩いてきたわけですが、
前日には、急斜面を5時間50分かけて
登って降りて、更に登り、
また2時間ほど降りてきたのですが
全然疲労は感じませんでした。

そうなのだ、わたしにとっては
山道よりもこんなアスファルトの道、車の道が
一番の苦行であると、知ったのでした。

ともあれ17㎞と少し歩き、無事13番さんにつきました。

第13番札所 大栗山 花蔵院 大日寺

おおぐりざん けぞういん だいにちじ
宗派  真言宗大覚寺派 ご本尊 十一面観世音菩薩
創建  弘仁6年(815)
ご真言 おん まか きゃろにきゃ そわか

こちらでは「しあわせ観音」という、
合掌の手の中で、蓮を持って笑み
「しあわせ」を与える観音様がむかえてくれます。
樹齢100年をこえる 巨木の側にあり、
合掌している極彩色の小さな観音像です。

優しいお顔の観音様

そして通りをわたった向かいには
阿波の総鎮守、一の宮神社があります。

阿波一宮

その後、納経を終え、
境内でおにぎりをたべて
再びあるきはじめました。

でも次はとても近いです。

また鮎喰い川沿いに出て
綺麗に川が遠くまで見える橋をわたって
約2.3㎞。

第14番札所 盛寿山 延命院 常楽寺

せいじゅざん えんめいいん じょうらくじ
宗派 高野山真言宗 ご本尊 弥勒菩薩
創建 弘仁6年(815)
ご真言 おん まい たれいや そわか

四国お遍路八十八ケ寺の中で唯一
ご本尊が弥勒菩薩さんのお寺です。

そしてここで何より印象的だったのは地面です。

岩肌の上にたっていて、ぼこぼこしてます。
「階段の上にある境内は
奇形な岩盤の断層が重なる流水岩の庭
自然の美しさにとけ込む魅力を醸し出す」
と、紹介されていました。

また、山門がなく、石柱が両脇に立っているだけでした。
全体的に、なんとなく、雰囲気も含めて、
珍しいことがたくさんの、とても印象的でした。

境内の岩

時間は、この段階で14時ぐらいでした。

そこから次の15番札所までは、更に近いので
気分もより軽やかです。
その距離わずか800m。

田園風景の中を、ゆったりすすんで10分くらいでつきました。

第15番札所 薬王山 金色院 國分寺

やくおうざん こんじきいん こくぶんじ
宗派 曹洞宗 ご本尊 薬師如来
創建 天平13年(741)
ご真言 おん ころころ せんだり まとうぎ そわか

14時20分到着。
上にありますように、ここは国分寺です。
歴史の授業でならったあれです。

四国霊場には四県に国分寺があり、
その最初の札所が「阿波國分寺」

どのお寺もそうでしたが、
全体的に国分寺はちょっと雰囲気違うと感じました。
大きかったり、どこか派手ではないけれどおしゃれ??
特にここは禅宗の雰囲気がつよいからかもしれませんが、
そんな気がしました。

そして、ここを出た時でした。
花かごのようなものを腕に下げた女性が立っていました
年のころは、わたしと変わらないくらいかもしれません。
その方が声をかけてくれました。
「お疲れ様です。これお接待です。お好きな柄をお選びください」
と仰って、かごの中身をわたしに見せてくれました。

そこには、様々な絵柄の布で作られた
小さな巾着がありました。
「中にティッシュと飴をいれています。
夕方近くから、これる日はここに立って、
お遍路さんにお渡ししているのです」
ということでした。
勿論、手作りの巾着です。

もうこれも、とても有難く頂きました。
そしてこの時に入っていたティッシュが
先日お話した、お山のトイレでは必須
水に溶けるティッシュでした。
さすがです、そこまで考えてくださってます。
巾着は、今も使わせていただいています。

感謝の気持ちと共に、また歩き始めますが
次のお寺までも近くて、1.8㎞
田んぼの脇の舗装道路のような所をゆきます。

細い農業用のような水路にそって
水の流れと共に歩くのので、音が心地よい道でした。

ただ、途中で、ふいに
絶対に地元の人しか行かないよね…というような
細い路地に入るので、少しだけ不安になりました。

でも、一応、角々には四国の道という石柱が立っていますし、
所々、例えばカーブミラーの柱などには
方向の矢印と、あと何キロ、などが記された
お遍路マークつきシール
が貼ってあったりするので
間違いないとは思うのですが。

民家の裏に小さな溝がながれるような
車一台がやっと通るかな、というような道で
犬の散歩をしている人とすれ違ってご挨拶したり、
かと思えば急に、畑の中に大きな鉄塔がずっと並ぶ横を歩いたり。
そして畑仕事をしている方に「こんにちは」とご挨拶しながら進んで、
路地を曲がったら、とても急に目の前に出てきた!という印象のお寺が
16番さんでした。

第16番札所 光耀山 千手院 観音寺

こうようざん せんじゅいん かんおんじ
宗派 高野山真言宗 ご本尊 千手観世音菩薩
創建 天平13年(741)
ご真言 おん ばざらたらま きりく そわか

実は、場合によっては
この日はここまでしか
お参りできないかもしれないと思っていました。
納経所は17時で閉まります。
ところが、まだ15時を過ぎたところでした。
次までは余裕で進める時間です。

すると、お寺を出たところで
「やっぱりバスできたんですか?」と
声を掛けられました。
男性のお遍路さんでした。
よくみたら、朝、旅館近くで一緒で、
「バスで行きます」と仰っていた方でした。

「いえ、歩いてきましたよ」って答えましたが
「僕はバス出来て今ここです。今から納経です。」とのこと。

多分、バスの本数も多くはないでしょうし
乗り継ぎでのロスなどもあったと思うのですが
「アスファルトちょっとしんどかかったけど
がんばってよかった、バスとあまり変わらないのか…
しかも、歩いたからこそ、とても嬉しいことあったし…」と、
ますます元気になって、
この日の最後のお寺へ向かいました。

第17番札所 瑠璃山 真福院 井戸寺

るりざん しんぷくいん いどじ
宗派 真言宗善通寺派 ご本尊 七仏薬師如来
創建 白鳳2年(673)
ご真言 おん ころころ せんだり まとうぎ そわか

こちらのお寺はJRの府中と書いてコウと読む駅の横から
線路を超えた向こうにあります。
ですから、駅前なので、郊外型のドラッグストアなんかもあります。

道も解りやすく、
大きな美し朱塗りの仁王門がむかえてくれます。
横に広いというか青空がすかっと空が広い印象がある
清々しいお寺です。

前のお寺から2.5㎞とありました。
到着時間は写真の記録から16:03だったようです。

ここには井戸寺というくらいですから
井戸があります。
お大師様が、人々が水不足で困っている聞き
錫杖でついたら清水がわいたという伝説です。

そしてこの井戸をのぞいて自分の姿が映れば満願成就、
映らなければ願いが叶わないとか、
寿命が短いとか、色々言われています。
わたしものぞきました。
お顔はくっきり映っていました。
よかったです。

門が立派で遠くからもよく見えます

ということこの日はここで終了。

ホテルにむかうため、府中駅まで戻ります。
そのままJRで徳島駅まで乗車、
駅近くにホテルをとっていたので
そこまで戻り、翌日の最終日は
そこからのスタートになります。

すでに18・19番札所はお参り終えているので
翌日は20・21番さん、山越へ向かいます。

府中(こう)駅 夕焼けがキレイな時間でした

ということでこの日は
いろいろあった一日でした。
約9時間、総距離約25キロくらいでしょうか
そんな区切りうち3日めでした。

ここまでおつきあいいただき
ありがとうございました。

次回は急勾配の鶴林寺のぼっておりて
またのぼって、西の高野山とよばれる太龍寺まで。
またよかったらおつきあいください。

それではまた次回

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