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眠れない夜に

 眠れない夜が続くというのは、当たり前だが理由がある。大体が将来の漠然とした不安か今日の定期テストの結果について、失恋、欲求不満、明日への興奮、などと主張するが実際のところは夜食の食べ過ぎ、ブルーライト、夕方のうたたね、グルテン、砂糖、油脂、カフェインの過剰摂取、習慣など。内面的な要因よりも、それで生じた外的要因で人は眠れなくなる。

 寝たいのに寝られないというのは、ほとんどが妄言である。寝たいというのなら、23時には目をつぶっているはずだ。病気でもない限り(恋愛は病に入らないものとする)なにか明日にしたくない理由が当人にはある。ただし、私は眠れない人に対して喧嘩を売ろうとしているわけではない。
 かくいう私も、最近は寝られない日々が続いている。一時期はカフェインの摂りすぎ。元々あまり耐性がなかったので、ブラックコーヒーを5杯ほど飲んだら痺れとめまいでしばらく立ち上がることができなかった。もう一つは親知らずの抜歯。痛み止めがなければ眠れない。最後は考えごと。将来の展望や自分の悪癖を悶々と考えているうちにいつのまにか朝になっている。これこそが悪癖なのだと察する思考力は、夜は抜け落ちているのだ。

 なにか不安なことがあって眠れないのであれば、意識が吹っ飛ぶまで不安に向き合えばいい。ずっと考え事をして、答えが出るのであれば、答えが出るまで考えておけばいい。
 明かりひとつない自室のベッドの上は、この上なく考え事に適した場所だ。何も見えない場所は、自分の思考くらいしか見るものがないから。しかしながらそこでの回答は悲惨なものが多い、人は我慢できずに布団を頭までかぶったり、急にしゃくりあげて泣いたり、電気をつけて部屋を片づけ始めたりする。
 涙で枕を濡らすならば、塩辛い涙が甘くなるまで泣けばよい。もう既に涙が甘いようなら、それは砂糖の摂りすぎなので、朝の紅茶はストレートで、トーストには蜂蜜ではなくハムとチーズをのせよう。

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