【やさしく解説】線維筋痛症ってどんな病気?(1)
★この記事は…
対象:線維筋痛症という病気のことをよく知らないという一般の人に
内容:病気の特徴や課題ついて知ってもらうことで
目的:社会の理解を促し、この病気を疑われる人が適切な医療につながれるようにしたい
という思想で執筆しています。
「線維筋痛症」……体が痛い病気(?)医師もよく知らない
みなさんは、「線維筋痛症」という病気をご存知ですか。
八木亜希子さん、レディーガガさんなどが病を公表し、活動を休止されたことなどで知った方もいらっしゃるかもしれません。
なんと多くの先進国で人口のおよそ2%程度がこの病にかかっていると考えられており、決して珍しくない病気です。
しかし"全身の痛みがある病気"というところまではなんとなく聞いたことがあっても、それ以上のことは知らない方が多いのではないでしょうか。
というのも、この病気、そもそも医師の認知度が低いのがずっと課題になっているくらいなのです。医師でさえよく知らないので、大きな大学病院に行ったとしても診断してもらえなかったり、誤った情報を伝えられたりして、適切な治療を受けられていないという患者さんが非常に多いのです。
私が主催するオープンチャットでは、どこにかかっても「何の病気かわからないですね」「うちでは何もできません」と言われたり、適当に痛み止めを出されるだけで何も進展しない、という経験を持つ人がたくさんいらっしゃいます。
このような状況ですので、非常に悲しいことですが、患者自身が正しい情報にたどり着いて、「自分はもしかして線維筋痛症なのかも」と疑い、線維筋痛症の診断・治療を正しく行ってくれる病院を自分で探す必要があります。(かなり無理がありますが……これが現実です)
なので、せめてこの記事を読んでくださった方には、自分や周囲の人が同じ状況になった時に、適切な医療につながれるようになってほしいという願いを込めて書きます。
線維筋痛症の特徴
線維筋痛症とは、簡単に説明すると「体に明らかな異常がないのに、長期間にわたって体の広い範囲が痛む病気」です。動けばもちろん痛いですが、全く動かなくても、容赦なく激しい痛みが続きます。重症になると痛みで自分の体が支えられなくなり、寝たきりになる人もいます。
痛みの強さは筆舌に尽くしがたく、「血管の中をガラスの破片が流れている感じ」と表現する人もいます。私の場合は「全身のあらゆる場所を思い切り引っ張られてバラバラにされる感じ」と言っています。
ミソは、こんなにも痛いのに、どんなに網羅的な検査を行っても、筋肉、関節、神経、血液などに異常が見られないため、大学病院に何ヶ月も通って検査漬けになった末に、「あなたの体は正常です、という結論になってしまいますね」と言われてしまう点です(私がそうでした)。
すると、「体に異常がないので精神的なものでしょう」と言われるのですが、特に思い当たる悩みはありません。というか、心の状態には関係なく、ずっと痛いんですが……。その状態で心療内科や精神科に行っても、「あなたのメンタルには特に問題はないようです」と言われることになります(言われました;)。もし、ここで痛みが続くことに悩んでいたりしてうつ傾向があると、抗うつ剤などの治療が始まりますが、線維筋痛症は心の病気ではないので、それでは一向に治りません。
現代の医療は、検査をして、見つかった異常を元に診断・治療するので、異常が見つからない以上はわからない、と言われてしまい、どの診療科に行っても「うちじゃない」と匙を投げられてしまいます。
線維筋痛症の診断基準
こういう背景があるので、線維筋痛症の診断基準は「症状」で決まります。最近は米国リウマチ学会の診断基準2016年バージョンが用いられています。
なんだか難しそうですが、簡単に言うと「痛みポイントとその他症状ポイントを数えて、一定の基準を満たしているか」と「痛みが広範囲で、長期間か」の2つでわかります。患者自身が判定できますので疑いを持っている人はやってみてください。興味のない方はさらっと飛ばして大丈夫です。
WPI
まず左の絵を見て、過去一週間で痛む箇所に○を付けて、その個数を数えます。これがWPIという点数です。
SSS
次に右の2つの表を見て、自分の感覚で疲労感などの症状を点数化します。これがSSSという点数です。
質問:次のどちらかに当てはまりますか?
1.WPIが7以上 かつ SSSが5以上
2.WPIが4~6 かつ SSSが9以上
→「はい」 ならば全身痛の判定へ進みます。
全身痛の判定:5領域のチェック
右下の *領域 を参考に、痛みが広範囲に広がっているか確認します。
質問:次の5つのうち、4つ以上のエリアで、3ヶ月以上痛みが持続していますか?
1.右上肢
2.左上肢
3.右下肢
4.左下肢
5.臀部
→「はい」 ならば線維筋痛症の疑いがあります。
専門の医療機関での受診をおすすめします(後述)。
先ほど、筋肉、関節、神経、血液などに異常が見られないと説明しましたが、この基準では他の疾患があったとしても、上の症状が当てはまれば線維筋痛症も併発しているとみなされます。線維筋痛症のみを発症している場合は、異常が見つからないことが多いです。
(1)のまとめ
ひとまず今回の内容を3行でまとめます。
線維筋痛症とは、「体に明らかな異常がないのに、長期間にわたって体の広い範囲が痛む病気」
検査で異常が見つからないことが多いので、匙を投げられがち
診断基準は「症状」ベース。患者自身が簡単に判定できる
では、異常がないのになぜこんなにも全身が痛いのでしょうか?
(2)へ続きます。
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