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「みわたす絶景 名所絵×鳥瞰図の魅力」(藤澤浮世絵館)

「鳥瞰図」は文字通り鳥の視点から、極端に高い場所から描かれた俯瞰図で、浮世絵時代としては「一覧図」、近代以降は観光案内図として用いられた手法。飛行機・ドローンの無い時代にとってはこれもまた空想の産物でもあります。

作品は『大正広重』と呼ばれた吉田初三郎によるものが中心で、「作品」というよりは実用的な「商品」、グッズ的なものだとどこかで思っていたのですが、展覧会の最後、拡大コピーされた《関東震災全地域鳥瞰図会》の前でふと立ち止まってしまいました。関東大震災翌年である1924年、新聞の付録として制作されたもので、残酷でもある災害の姿を淡々と描かれている様には「商品」以上のものを感じました。吉田初三郎は原爆投下直後の広島を取材、文字通り投下直後の広島を描いた『広島八連図』と呼ばれる鳥瞰図を制作しているとのことで、ジャーナリスティックな顔が俄然気になるところでした(現状、藤澤浮世絵館以外で観た経験が無いことが個人的にちょっと残念です)。

今回の展覧会では『御上洛東海道』のほか、鳥瞰的なアングルで制作された浮世絵も複数展示。河鍋暁斎のような著名なものからそうでないものまで、中々レベルの高い作品が展示されていると思いました。個人的には初代広重の《東海道五十三次細見図会 平塚江三里半》に出てくる人物の描かれ方が印象的でした。太田記念美術館でもそういう展覧会をやってたみたいですが、広重の場合、ちゃんとと書くよりもこういうコミカルなほうがなんか合っている気がします。

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