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【ネタバレ有り】映画「第三の男」(1949、英)

 地元で上演会があったので観てきました(吹替版で鑑賞)。オーソン・ウェルズ出演のノワール映画で、テーマ曲はヱビスビールのCMでおなじみ。割と緊張感のあるシーンも多い本作ですが、あの曲がかかるたび、どうもほっこりとした気分を抱えてしまうのは時代です。

 物語としては後半、映像で観たかった場面が会話ベースで進行してしまったり、若干「端折った」というか、バタバタな印象もありましたが、それを差し引いても十分「面白かった」と思える映画。特に心理描写が非常によく描けているなぁと思いました。

 被害者に対して同情することなく、犯罪や争いこそが文明の発展には必要だと言ってのける犯罪者ハリー(ウェルズ)、そんな犯罪被害者を目の当たりにし、最終的にイギリス軍に協力をするホリー、ハリーに対する敵対心を口走りつつ、元恋人として最後までハリーを庇おうとし続けるアンナ…犯罪者とその擁護する者としない者、三者の描写が光ります。

 特に、有名な観覧車のシーンは印象的。被害者への同情を求めるホリーに対し、観覧車のドアを開け、

下を見ろよ。
あの点(遊園地の来場客)の一つが止まったら同情するか?
点が止まる度に2万ポンドもらえたら、おまえはその金を断るか?

字幕版より引用

 と聞くハリーの台詞は生々しく光ります。犯罪心理学は勉強したことは無いんですが、きっと犯罪、人を傷つける行いをする人間心理って衝動的にせよ慢性的にせよ、こうした同情の部分が欠落しているんじゃないかなと。この映画を観るのは今回が初めてでは無いのですが、何度観てもヒヤッとさせられるシーンです。

 ビジュアルの美しさを追求した映画でもあると思いました。柵越しの画角やラストカットでの一点透視図法の強調。アンナの家がまるで古代宮殿のような豪華さだったり、よく考えたら前述の観覧車シーンも、観覧車である必要はなく、ビジュアル面の美しさを意識した結果なのかなと。

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