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祈りのカタログ・第三十一話「主のことをもう少し」

 古事記の冒頭に登場する〈高神結たかみむすび〉と〈神結かみむすび〉の二柱ふたはしらの神を〈産霊うぶたまの神〉と呼びます。
 この産霊の神は、すべての神々や霊やありとあらゆるせいや、果ては化け物たちまで、この世界に生み出すので〈産霊〉と呼ばれています。つまり霊を産むと言う意味の名前です。ちなみに、産土うぶすなと〈土〉の文字を入れて書く方の神は人が生まれた土地を守護する神として知られています。こちらはどちらかと言うと人が生まれて初めて両親に連れられてお宮参りした神社の神のことを呼んでいるようです。
 古事記の冒頭に登場した天の御中主の神の主の部分を辞書で引くと、

 ——山沼森などに古くから住み、あたりを支配していると考えられている大きな動物。また、一つの職場・場所などに古くからいる人をたとえて言う。

 とあります。
 動物の方は感覚的に分かるとして〈職場の主〉と言うのは言い得て妙ですね。しかし、この概念が無い人たちにとって、つまり外国の人たちには、
「動物があたりを支配すると言う概念」
 は理解し難いものかも知れません。ですが人間も動物なのです。

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