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祈りのカタログ・第三十五話「音に敏感な子供たち」

 歌うような祝詞の秘伝は心臓の鼓動のリズムを基本としています。それに深い呼吸で、次第に波のようなうねりを音の中に含ませて行くのです。人の中で特にまだ幼い者は波の畝りのような音にとても敏感です。
 それは、

——体が小さく神経が造られて行く過程にあるため、神経そのものが音に対して敏感である。

 と言う理由と、

——心が魂の記憶を持っている。

 と言う二種類の理由によってのことです。
 まだ、神経が敏感な子供たちは感性も豊かです。それが年齢と共に鈍感どんかんになって行くと、心までもかたくなになり、考え方そのものも柔軟性を失います。しかも、それだけではありません。体もかたくなるのです。足首は特に硬くなり、足の裏は使えなくなって行くのです。
 人が裸足で歩いていると、猿から人へ進化した過程を感じることがあります。
 そして、体が硬くなると心も硬くなります。これは実際は硬くなるのではなく、新しい処理を脳が受け付けなくなる現象です。その現象が引き起こす精神状態のひとつに〈固定観念〉と言うものがあります。たとえば、雨が止んだのに、まだ暫く傘を差して歩いている人を見たことはありませんか?
 この人の心の中では、
「雨が降っている」
 と言う固定観念が出来上がっていますので、新しい認識である、
「すでに雨は止んでいる」
 と言う考え方が出来ないのです。
 固定観念は脳が新しい処理にエネルギーを割かないための脳の戦略のひとつです。そうですねぇ、あなたの意識はあなたの脳に少しだまされているのです。
 この騙される脳と言う機能があるため、脳は余分な、しかも疲れる処理から逃げることが出来るのです。しかし、固定観念が増えると、脳はその外界のことを無視するようになります。

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