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不幸のすべて・第三十七話「幸福でいる秘訣」

 前回、戦略を学びながら心のパワーアップと書きましたが、播磨陰陽道で〈戦略〉と言えば『六韜りくとう三略さんりゃく』を意味します。
 六韜三略は、兵法などの極意、秘伝のことを意味していますが、これは『六韜』と『三略』の二種類の本の題名です。
 六韜は、全六巻の巻物で、それぞれに文・武・竜・虎・豹・犬と書かれた題名がついていました。この六韜の第四巻に〈虎〉と書かれた巻物があります。これが、いわゆる〈虎の巻〉です。
 この巻物は、京都一条に住む伝説の陰陽師・鬼一法眼きいちほうげんが秘匿していたと言う伝説があります。彼は文武の達人と言われ、所持していた兵法の秘書『六韜三略』を源義経に盗まれた話で知られています。
 伝説によると、源義経は鬼一法眼の娘をたぶらかして虎の巻を盗み見たそうです。源義経は虎の巻の極意を知って、その後、活躍することになります。
 これが史実と合致するかどうかについては分かりませんが、陰陽師は古くからこの秘伝の書『六韜三略』をテキストとして使っています。他にもいくつかの戦術書をテキストとして使いますが、播磨陰陽師はこの『六韜』を最も尊い戦術の奥儀として考えています。
 その理由は播磨陰陽師の祖先のひとりである藤原鎌足公が特に愛した書物だからです。
 そして、

——播磨陰陽師として子孫や流れをくむ者は、すべてこの書を学ぶ必要がある。

 と伝えらています。
 最近は『六韜』が書店で手に入ります。しかしそれは基本であって、われわれ播磨陰陽師に伝わっているものとは少し内容が違います。先祖代々、様々な達人たちが『六韜』の解釈や説明を追加して伝えています。
 播磨陰陽師には〈三種みくさ神宝かんだから・秘伝の書〉と呼ばれる書物をテキストとして学びますが、この世界の幸福や不幸の構造にかかわらず、ありとあらゆる秘伝や理論がこれらの書物を基本として展開します。

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