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祈りのカタログ・第三十四話「空気の読めない人には」

 人の無意識は、相手の心を感じようとして、心そのものを合わせて行くものです。これは無意識に行われていることなので、意識出来る人はほとんどいません。しかし、相手の気持ちを理解するためには、この機能が必要なのです。人は相手の表情を見て、それを無意識に真似する傾向を持ちます。そうすることにより、表現筋から情報を得て、相手の気持ちに同調して行くのです。これを〈表情のミラーニング〉と呼びます。
 表情のミラーニングでは、それを意識している人がいなくても自動的に心を合わすことが行われています。たとえば、舞台で踊る人の表情を感じて、心の中では表情どころか手足も動かしているのです。これは無意識に行われていますが、意識せず、むしろ無意識でいてくれた方が、舞台に立つ人から見ればありがたいです。
 もしここで、誰もこのような無意識に相手の心を感じようとすることを、けして、行わないとしたらどうなることでしょう?
 すると、誰も空気を読めなくなります。
 また、他人の気持ちを感じることも出来なくなります。しかし、他人の気持ちを感じることの出来づらい人がかなりこの世界にはいます。そのような人の特徴は自分を中心して物事を考えることです。他人のことは考えられません。こう言う傾向を持つ人は表情筋が未発達で動きに乏しく、相手の表情から気持ちを読み取る力も弱いです。
 よく、
「オタクな人は方言を話せない」
 と言いますが、方言を話すには空気を読む力が必要です。それがない人は、空気はおろか、自分の表情すら思うようになりません。と言うか、何も思わないので表情筋が発達しないのです。
 また、常に自分がどうかと言う部分にだけこだわり、他の人がどのように感じるのかなど考えもしません。このような人は自分にだけ正直です。それはとても自由で良いかも知れませんが、強い孤独感に悩まされていると言う欠点があります。この欠点は実際問題として他の人の呼吸に自分の呼吸を合わせられないことが原因の多くを占めるのです。

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