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祈りのカタログ・第二十五話「亡霊が行う現象とは?」

 和製ホラーの霊的なものの成せる技は、あくまでも想像上の出来事です。現実とは違います。あのようなことはありえませんので安心してください。物語として見ると、ホラーに出て来る怨霊は面白い存在かも知れません。これらは分類から言うと、外から見た幽霊現象になります。それを体験する、つまり幽霊を目で見た人たちは、どのような体験をするのでしょうか?
 多くの場合、霊的な、特に亡霊の類を見るのは霊視力のなせる技です。霊視力がなくても、人を殺した人の心の中に良心の呵責かしゃくがあった場合、それが引き金になって幻覚を見ることがあります。良心の呵責に絶えかねてと言う言葉があります。そうやって見ることが多いです。しかし、これはあくまでも人を殺していた場合に限定される現象です。
 直接、殺すかどうかは無関係で、
「自分の行為が、誰かの死の原因となった」
 と思うことでも良心の呵責は起こります。
 良心の呵責を〈トラウマ〉と見るかどうかは別として、亡霊現象にはトラウマによる精神的な現象のひとつとは言いきれない部分があります。それは、亡霊現象には現実とは違う時間軸があることです。
 たとえば誰かがトラウマによる亡霊の幻覚を見たとします。それは幻覚にすぎないのでリアルタイムで目撃します。
 つまり、
「今、亡霊を見ている」
 と思っている時は、他の人と同じ時間の中にいるのです。
 しかし、亡霊現象の多くは時間の解像度が違っています。時間には解像度と言うようなものがあります。それは現実の時間の中にあるのではなく、体験者にのみ感じられる現象です。
 その解像度の中では、
「亡霊現象を体験している人の体験する数十分は、まわりの人には一秒以下の時間でしかない」
 と言うことになります。
 たとえば、ある人が亡霊現象に遭遇したと仮定します。すると、その人の中では数十分の時間が過ぎて行くのですが、ふと、気がついて正常な状態に戻ると、周りの人が同じ世界を見ていないことを知るのです。

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