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御伽怪談

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昔の実話怪談に基づいた、お伽話のようなオリジナル小説です。各々原稿用紙16枚です。第一集は、江戸に広がる猫のお話が中心です。
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#幽霊見に行こか

御伽怪談について

 はじめまして。播磨陰陽師の尾畑雁多です。大阪文学学校で小説を学んでいます。  御伽怪談…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第四集・第八話「盆に帰る祖霊」

  一  ある日、市兵衛が、火鉢に温まりながらアクビをして申した。 「死んで後、盆に、そ…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第四集・第七話「迷い出る女房」

  一  延宝六年(1678)、時代は徳川様に代わって七十年ほどが過ぎた。ある春の敦賀で…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第四集・第六話「立山の偽幽霊」

  一  その昔、江戸は亀戸に松五郎と言う男が住んでいた。仕事は貧しい版木彫りであった。…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第四集・第四話「イトの逆恨み」

  一  延宝年間(1674)のことであった。播磨の国・佐用村に、イトと言う独り身の年増…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第四集・第三話「本能寺と死霊」

  一  寛文十一年(1671)のこと。京都・本能寺に殊勝なる若い僧侶がいた。名を澤園と…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第四集・第二話「さまよう楠公」

  一  その昔、弁首座と申す禅僧がいた。五月の終わり頃、諸国行脚の旅の途中、遠州(静岡)相良ですでに日も暮れていた。街道を外れた傍らに見つけた辻堂に行き一夜を明そうと思った。まったく粗末な辻堂であった。扉を開くとギシギシと埃が舞った。しばらく誰も入ったことのない、そんな気がした。掃除された形跡などもちろんなく、足跡が埃の中にポツポツとついた。  弁首座は、やれやれと言った顔をした。 ——これなら近郷近在にも僧侶はおらぬな。  関ヶ原が終わって二十年。まだ、戦の爪痕の残る地

御伽怪談第四集・第一話「磔女の頼みごと」

  一  江戸時代のはじめの頃、九州で島原の乱があった。その中で一番の手柄を立てた知恵伊…

尾畑雁多
2年前
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