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御伽怪談

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昔の実話怪談に基づいた、お伽話のようなオリジナル小説です。各々原稿用紙16枚です。第一集は、江戸に広がる猫のお話が中心です。
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2022年3月の記事一覧

播磨陰陽師の独り言・第二百三十二話「スノーモビル」

 北国の出身でない限り、スノーモビルに乗った経験のある人は少ないと思います。スノーモビル…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談短編集・第三話「飢えた疫病神」

 第三話「飢えた疫病神」  嘉永元年(1848年)の夏から秋の頃、疫病が流行した。その頃、江…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談短編集・第二話「仙人の福仏坊」

 第ニ話「仙人の福仏坊」  正保元年(1645)の頃のこと。奥州会津領の山中に〈福仏坊《ふく…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談短編集・第一話「番町の疫病神」

 第一話「番町の疫病神」  文政十一年(1828)のこと。  拙者は牛奥平太郎と申す具足奉行…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第四集・第八話「盆に帰る祖霊」

  一  ある日、市兵衛が、火鉢に温まりながらアクビをして申した。 「死んで後、盆に、そ…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第四集・第七話「迷い出る女房」

  一  延宝六年(1678)、時代は徳川様に代わって七十年ほどが過ぎた。ある春の敦賀で…

尾畑雁多
2年前
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御伽怪談第四集・第六話「立山の偽幽霊」

  一  その昔、江戸は亀戸に松五郎と言う男が住んでいた。仕事は貧しい版木彫りであった。版木彫りとは、浮世絵などの元版を彫る仕事のことである。  体は丈夫で、それだけが取り柄であった。親もすでに亡くなってひとりぼっちの松五郎は、苦労してようやく美しい妻に巡り会い、仲睦まじい日々を過ごしていた。長屋の片隅に居を構え、狭いながらも楽しいわが家。幸福な日々を過ごしていた。  妻の名は〈お鈴〉と申し、やはり親も兄弟もない天涯孤独の身の上であった。  お鈴も松五郎に出会えて良かったと