【小説】REVEALS #7

ミーハー

イベントには中村愛さんもオファーされていた。Youtubeでしか見たことなかった人が生で目の前にいる。本物だ。アダルトなマジックネタをされる女性マジシャン芸人さんだ。初めて見たときはかなりの衝撃を受けた。アダルトな部分を恥ずかしく思うところもある。しかし、この人のネタを見てマジックはもっと自由でも良いんだと思い、可能性がとても広がった。

「ねえ、見て。ねぇ見ーて!見てってば!トランプじゃなくて、わたし💛」

実は、このつかみのフレーズが好きだ。恥ずかしくて直視出来なくなる。しかし、これがマジックに効いてくる。ミスディレクションにもオフビートにも活きてくる。
心理学的な操作がしやすくなるのだ。カードを扱う手つきはそれほど洗練されていないように見えるが、このハンドリングがキャラと合っている。決してマジックが下手ではない。そして、ネタとしてもキャラとしてもなかなかに完成度が高い。

そして、女性としての魅力も高い。
色々な意味でファンになのだ。

憧れの人が目の前にいる。

「あの、すみません。中村愛さん。」

舞い上がってしまっていた。口が勝手に声をかけてしまっていた。頭の中は真っ白だった。どうするんだ、おれ。

「ファンなんです、握手してもらっていいですか?」

「あ、きみ!アレだね。」

握手してもらってしまった。
胸がどきどきしている。
こんなに緊張したことが今までなかった。
手が震えている。

「リモートマジックの。話題になってるよね。私のYoutubeに今度良かったら来て。」

「いいんですか?あ、すみません、よかったらサインも…。」

そう言って持っていたトランプにサインしてもらった。
夢心地だった。
ふわふわしていた。
相変わらず鼓動が早い。
腰が抜けそうになっている。

今までこなしてきた本番でもこれだけ緊張したことは無かった。この後の本番に支障が出てしまいそうないなくらいドキドキしている。

「礼司って、案外ミーハーだったんだね。」

「あ、いや。・・・うん。」

他の演者さんたちは、コロナでオンラインの参加をしていたり、コロナように開発した動画撮影しながらの新しい映像マジックを発表していた。
みんなこの状況の中でも何か新しいものを考えたり、やり方を模索している。とても心強く感じた。


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