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【小説】REVEALS

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リモートマジックを題材にした小説です。 #1〜 #12話まであります。 是非読んで下さい。 #11の話が種明かしになっていて 、 有料設定となっています。 マジックの種明かし価格と…
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固定された記事

【小説】REVEALS #1

超能力者と演出 「ユリ・ゲラーの再来か!?スーパーマジック特集」とテレビ欄のゴールデンタイムに書いてあった。ダサいタイトルだと思いつつも、マジック特集の番組に期待している自分がいる。録画もちゃんとした。マジック番組のタイトルにユリ・ゲラーなんて使っているが、本人から「あれは超能力なんだ」と言われやしないか当事者でもないのに無駄に心配してしまった。 マジックの勉強ついでて知ったのだけれど、今時の高校生はユリ・ゲラーなんて知らないだろうと思う。ユリ・ゲラーの名前を出すというこ

【小説】REVEALS #2

成功したリモート現象 何の仕掛けもないトランプに奇跡が起きた。 家にあったトランプを箱から出して適当に混ぜ、選ばれたお客さんが10という数字を言って、その枚数のカードをめくった。 すると、画面の中のカードと自分がめくった10枚目のカードが同じクローバーの2だったのだ。 後頭部から背筋に沿って電流が流れた。 テレビの中で起きていた現象が目の前のトランプでも起きたのだ。 驚きを通り越して少し気持ち悪かった。 まるで人知を超えた力で自分が操られているかのような感覚。同時にこれま

【小説】REVEALS #3

大我の初パフォーマンス 「ねえ、マジックやってみてもいい?」 あれから二週間大我はマジックの話をしなかった。例の漫画を読んだのだろうか、特に何か質問してきたりもしなかった。だから、残念だけどマジックには興味がなくなったのかと思って諦めようとしていた時だった。 「なに、大我もマジック始めたの?」 竹下が割り込んできた。 「そうなんだ、ちょっと練習したんだけど、見てもらっても良いかな?」 「おう、いいぜ。なあ、礼司?」 いちいち鼻につくが、待ちに待っていた大我のマジ

【小説】REVEALS #4

コインと秘密とリスク あれから月に一回くらいマジック特番で北川天馬を見るようになった。その度に同じリモート現象を起こしては、バズっているようだ。しかも、その度に拡散の広がりが大きくなっているようだ。今日のネットニュースにもなっていた。 あれから礼司に提案しようと思っている事がある。マジックで他人の役に立てないかと思っていた。 コロナ休みの間、打ち込めるような物もなく、ただ漫然と退屈で陰鬱な日々が続いていた苦痛の毎日。不要不急と言われて多くのエンターテイメント産業に関わる人

【小説】REVEALS #5

予言マジック 礼司のマジックは想像以上にうけていた。ひろしさんのリアクションに助けられた部分もある。会場の空気が温まっていた。被災地では笑いづらい空気感があるというが、もしかしたら、お客さんたちは笑いを求めていたのかもしれない。そこまで考えてあのピックポケットマジックを選んだのだとしたら、やっぱり礼司はかなり優しい人間だと思う。 いきなり見ず知らずのお客さんを選ばずに、さっき会った人を選んだのも警戒心が少ない人の方がやりやすいとか思ったのだろうか。礼司はいったい何をどんなふ

【小説】REVEALS #6

マジックの評価とボランティアの評価 レイジとタイガがSNSで話題になっている。 あいつらいつの間にこんなことしていたんだ。 悔しいけれど、鼻が高くもある。 Twitterで「#リモートマジック」がやたら目に付く。ボランティアイベントでのマジックが1.4万RTもついている。あの時はタネが何かは分からないと言っていたのに。ちゃっかりリモートマジックを成功させているじゃないか。 出し抜かれた。 また、ボランティア活動という響きもあいつらをの株を上げている。特別良い奴らでもない

【小説】REVEALS #7

ミーハー イベントには中村愛さんもオファーされていた。Youtubeでしか見たことなかった人が生で目の前にいる。本物だ。アダルトなマジックネタをされる女性マジシャン芸人さんだ。初めて見たときはかなりの衝撃を受けた。アダルトな部分を恥ずかしく思うところもある。しかし、この人のネタを見てマジックはもっと自由でも良いんだと思い、可能性がとても広がった。 「ねえ、見て。ねぇ見ーて!見てってば!トランプじゃなくて、わたし💛」 実は、このつかみのフレーズが好きだ。恥ずかしくて直視出

【小説】REVEALS #8

善意とヒロイズムの交差点 「やあ、望月礼司くんと、春日井大我くんだったね。今日はわざわざ来てくれてありがとう。」 オレ達の目の前に北川天馬が現れた。握手を求められたので、いぶかしく思いながら応じた。向こうは優しい目つきだが、視線を外すことなくこちらを見ていた。こちらも目を逸らせない。 「君たちは、現象の秘密に気付いたんだね。」 「はい。偶然ではありましたけど。」 次の瞬間、彼は空気の密度を上げて言い放った。 「間違っても種明かしなんてしないでくれよ。色々なものが見

【小説】REVEALS #9

北川天馬のACT 「会場の皆さん、ソーシャルディスタンス保ってますか?インターネットの生中継を見ている人達も是非参加してくださいね。」 さすが天馬さん、軽快なトークで会場の空気を温めた。 視聴者のことも忘れずに話しかけて参加を促している。 この気遣いがこの勝負には重要なのだ。 「今回はトランプを持っていない人でも参加できるようなものをやってみたいと思います。」 「私はここでトランプを使いますが、会場の皆さんや、モニターの前の皆さんは、紙とペンを用意してください。」

【小説】REVEALS #10

礼司・大我のACT 「では、続きまして、今話題の高校生マジシャン、礼司くんと大我くんです!どうぞ」 司会者が最後の進行を始めた。イベントもいよいよ大詰めだ。彼らがどんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみである。 「どうも、よろしくお願いします。今日は北川天馬さんに胸を借りるつもりで、しかし、勝ちに来たので、皆さん応援のほど宜しくお願いします。」 こっちの春日井くんは相変わらず人のよさそうな態度を堂々とする。 「今日はかなり準備をしてきました。色々とわがままを聞い

【小説】REVEALS #11(無料)

リモートマジックの種明かし コロナの第2波の影響で高校は、基本的にはオンライン授業になった。課題と動画ばかりで、早くも疲れてきている。リモートに慣れない先生もいれば、積極的にネットを活用している先生もいて先生たちも様々だった。 短い夏休みの出来事が嘘のように静かな日々だった。静けさを感じる度にあの時の興奮を反芻してしまう。北川天馬のマジック、オレ達のマジック、中村愛さんに出会えた事...。思い出してはニヤついている。そんな日々だ。 ところで、君は一連のリモート現象につい

【小説】REVEALS #12

暴露 「今日はワイドショーに呼んでいただいてありがとうございます。僕がマジックしても良いんですか?」 柄にもなく僕とか言ってしまっている。 「先日の北川天馬さんとの対決は凄かったですね!」 「ありがとうございます。でも、だとしたら僕ではなく大我に来て欲しかったのではないですか?」 意地悪を言ってみた。明らかに困った顔をしてはにかんでいた。 「そんな事ないですよ、礼司さんが大我さんにマジック指導をしていたと聞きました。そんな礼司さんのマジックが見られるのは楽しみです