顔面神経麻痺観察メモ1.1

 数日前に顔面神経麻痺と診断された。自分の備忘録兼、同じ病にこれからかかった人の参考になるように、苦しんでいる方からの情報が得られるように、治ったから方からの、アドバイスがもらえるように、書き散らかす。
 せっかくの体験もメモっとかないと忘れるし。身バレがないようにフェイクも入れてあるが、もし誰だかわかったとしても秘密にしておいてください。

第一話 救急車で運ばれた

「瞬きおかしくない?」
 妻のこと一言が、全ての始まりだった。

 仕事終わりに家に帰る。少しだけ早く帰れた。今後、時間を何度も聞かれるので、とにかく怪しいと思った時点で、時間をメモっておくといい。救急車で役に立つ。
 18時帰宅。
 そして少し休んでいる時に、冒頭の言葉を言われた。右目だけやけに瞬きをしているというのだ。
 言われて意識してみる。……おかしいのは左目だった。左目がうまく動かない。
「疲れてるのかな?」
 そう思い、少し休んでご飯を食べる。
 20時。疲れてを取るために風呂に入る。少しあったまると頭がくらっとする。やばい感じのふわっと感。
 とにかくすぐ風呂を出て、服を着る。
「救急車呼ぶ?」
 妻が聞く。判断がつかない。#7119に電話する。
「ただいま大変電話がつながりづらくなっております。緊急の方は119番に電話してください」
 そのような自動応答が繰り返す。いや、わからんから電話してんのや…。思わずそうっつ込みを入れる。待っていれば繋げてくれるタイプでもなさそうなので、何度か聞け直す。そしてついに!
「…救急相談な方は2番を…」
と、アナウンスが流れ、急いで2番を押す。
 ぷるるるるるる、ぷるるるるるる。
 呼び出し音が30回を数えた。
「よし、救急車を呼ぼう」
 即断即決。妻に頼む。
「自分で電話するより、緊急性が高そうだし、あとあと話が早くなる」
 快く妻は了承してくれ、119番をする
「救急です」
 妻が答える声が聞こえる。119番は最初に、「火事ですか、救急ですか?」と、聞かれるので、かけたことがない人は覚えておくと良い。
 名前と住所と、連絡先を伝える妻。そこで一度電話が切れる。救急センターは最低限の情報を聞くと、すぐ消防に伝えて救急車を向かわせる。詳細は消防から直接折り返しが来る。
 身の回りのものと、保険証、お薬手帳、現金数万、クレカ。絶対これだけは持つこと。当日清算できないと、あとあと面倒臭い。お薬手帳は、持っていないと飲んでいる薬を全部記憶から呼び出さないとならない。大量に常用薬がある人は絶対に忘れるな。
 自分で歩けると伝えておいたのに、救急の方はわざわざストレッチャーを持ってきてくれた。万が一を考えたのだろう。歩行には何も問題がないのと、俺の様子を見て、そのまま肩を組まれるようにして、救急車に運ばれた。どこまでも万が一を考えている人たちだ。
 救急車の後ろから見て右側にストレッチャーが固定され、ベッドになる。
「靴のままでいいですよ」
と、言われそのまま横になる。すぐに、指に酸素をはかるやつを取り付けられ、血圧測定。心電図取り付け。
 この辺の機器は症状によって違うのだろう。
 妻は車の反対側に固定されている長椅子にるよう指示される。
 救命士たちは、運転、連絡、患者、それぞれの担当がいるようだ。患者担当は少し色黒(焼けているのかもしれない)のイケメン。
まずは、現在の症状、それから何時頃からどのような変化があったのか細かく聞かれる。この頃には、口の左端に歯医者で麻酔が切れかけた時のような痺れが出始めていた。覚えてる限りで症状と、初診時に病院で聞かれるようなことが聞かれる。妻にも順番に確認していく。お薬手帳がここで役に立つ。妻がイケメンにお薬手帳を渡すと、
「これは、私がきちんと預かりました。きちんと担当のお医者さんに渡します」と、宣言する。やはりこういう時にイケメンはかっこいい。
 車の前方では、どこに運ぶか、緊急性の高さ、これはABCのような感じで決めているらしい、を相談して、なるべく受け入れてくれやすそうな、情報をまとめてくれている、ようだ。とにかく脳外科がある病院を、とのことで、いくつか電話してくれ、幸いなことに聞いたことのある比較的近所の病院にすぐに決まった。
 ベッドの上で固定ベルトが閉められ、妻もシートベルトをするように言われ、「出発します」の、合図があった。
 結構飛ばしているうえに、他の車を避けたり退いてもらったりしているのが伝わってくるが、そこまで不快ではない。運転手の技術がすごいのが伝わってくる。
 そんな中、自分の状態が悪くなってきたのを感じる。
「左目が閉じないのでつらいです」
 素直に伝える。
「そしたら、目を閉じるのをお手伝いしますので、そのまま目を閉じていてください。意識を失っていないか私が時々確認しますが、その時だけ何か声を上げてください」
 とのありがたい言葉と共に、イケメンの指が左目に触り、瞼を閉じてくれる。動かないけど、感触が残っているのが変な感じだ。口も痺れてあまりうまく喋れなさそうということも伝える。とにかく左側がどんどん動かなくなってきたのだ。
 イケメンは「喋らなくても合図してくれれば大丈夫」と、言ってくれる。至れり尽くせりだ。
 体感的には30分くらいだったが、おそらく15分くらいで病院に着いたように思う。
 後ろのドアが開けられ、各種センサーが外され、後ろから下される。何も見えないので、この辺は言われたことに従うだけ。
 そしてついに、ドラマなんかでよく見る「1,2,3」で、ベッドに移す作業が始まった
「半分ずつ行きます」
 え? 聞いてないけど! 1発で移動するんじゃないの!
「1,2,3!」
 本当にストレッチャーとベッドの間に背骨が当たった。もちろん丁寧に扱ってくれているので痛いとかはない。ちょっと夢が壊れただけだ。
「1,2,3」
 もう一度声がかけられ、無事ベッドにうつった。
 多分少し離れた場所で、引き継ぎが行われたのだろう。妻は待合の方に連れて行かれ、イケメンたちは消え、若いイケメンの医者が担当に変わった。看護師には若い美少女がつく。……イケメンと美少女しかいないのかこここは!
 時期が時期だし、当直は研修医なんだろうなーと、ちょっとだけモルモットになった気持ち。でも治してくれるなら誰でもいい。他にも数人いるようだし、天才集団に身を任せることにした。

 一気に書きたかったが、長くなってきたので、次の記事に続く


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