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「せっかくだから」のチカラ

京都ぐらしが始まってから、高校や大学で出会った人と会う機会がたびたびあった。誰かと会う予定が決まると、わたしは毎回GoogleMapとにらめっこする。

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NINIROOMのスタッフやゲストから教えてもらったおすすめスポットたち。この縮尺だと、道路の線がもはや見えないエリアもある(笑)。
この大量のピンの中から、その人と会うのにぴったりな場所を探すのである。

どこに住んでいるか、どんなものに興味があるか、相手が京都に馴染みのある人ではないなら、わたしが「相手に紹介したい京都」はあるか。

昼間の数時間なら、せいぜい2,3ヶ所あれば十分である。でもこれが終日コースとなると、GoogleMapとのにらめっこは「場所探し」というより「星座つなぎ」みたいになる。

関東に住むAが2日間来ることになったときは、まさに星座つなぎをしている気分だった。京都市内に散らばったピンとピンを繋ぐ、激ムズコース作りのスタートである。

こっちに行きたいけど、定休日かー。こことそこを同じ日に行くとなると、時間がかかり過ぎちゃうなあ。こっちも行きたいけど、あっちも捨てがたい!

みたいなことを考えていると、1時間なんてあっという間である。

納得のいくコースがなかなか完成せず、途中から脳みそは妄想に現実逃避し始めた。「昔の人が夜空から星座をつくるときは、もっと大変だったのかな〜。案外思いつきで<この星とこの星を繋いだらカニっぽいかも!>なーんて言いながらつくってたりして」

結局何時間もかかって、やっと納得のいくコースができた。

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当日、「その人に紹介したい、わたしが好きな京都」を巡る時間は、瞬く間に過ぎていった。

三十三間堂の千手観音を、奥の端っこから眺めるのが好きなこと。千手観音の前にずらりと並ぶ二十八部衆に、なんだかアベンジャーズみたいなかっこよさを感じてしまうこと。その中でも唯一の女性像、摩和羅女(まわらにょ)からいつも目が離せないこと。

その後も、前日に読んだBRUTASの「あんこ特集」に影響されて、道沿いの和菓子屋さん「仁王門」に寄り道したり、日本では珍しい資格を持ったバリスタがいる、コロンビアコーヒー専門店「El Punte Coffee Laboratory」に行ってみたり。

夜ごはんはNINIROOMでもたびたび話題に上がる和食料理店、「そ/kawahigashi」へ。「おむすびスト」こと波平さんがその場で握ってくれるおむすびはもちろん、日本酒やワインもこだわりが詰まっている。いちにち楽しかったね、と振り返っていると、Aはこんな話をしてくれた。

「せっかくだから」には、ポジティブな力があると思うんだよね。
「せっかくだから、ドミトリーじゃなくて部屋に泊まろう」とか、
「せっかくだから、早く新幹線に乗って京都でたっぷり時間を使えるようにしよう」とか。
「せっかく」という言葉を使う前には、その人の心の中には迷いがある。
でも、「せっかくだから」の後ろには、必ずポジティブな言葉が来るでしょ。
「せっかくだから」と言うことで、その迷いをポジティブに振り切れる。いい言葉だなって思った。

そうか、今日が楽しかったのは、「せっかくだから」がたくさん詰まっていたからか、と気づいた。

せっかくだから、わたしもAも楽しめるコースになるようこだわったこと。
せっかくだから、ちょっとおしゃれなお店を予約したこと。
せっかくだから、夜更かしして話したこと。

「せっかくだから」は、楽しい。

その物事が「せっかく」かどうかは、主観でしかわからない。でも、「せっかくだから」と言った瞬間、特別な感じがしてくるし、使いながらうきうきする。

考えてみると、めちゃくちゃ時間がかかったコース作りは全然おっくうではなくって、むしろ達成感さえ感じていた。

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翌朝、お気に入りのパン屋さん「CASSINI」に行って、朝ごはんを調達してきた。

「パン、あっためる?」
「いや、いいよ。いつもそのまま食べてるし」



「せっかくだから、あっためてから食べようよ」








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