コスモスに揺れる
夕暮れ時,秋桜が風に揺れる公園のベンチに,一人座っていた。
ピンク色の花々が夕日に染まる姿は,
まるで恋人たちが交わす甘い約束を思わせる。
今日が「コスモスの日」だと知っていても,
私には交換する相手はいない。
そよ風が髪を優しく撫で,影が徐々に長く伸びていく。
ふと,手元にある一輪の秋桜を見つめる。
誰かのために贈る予定だったわけでもなく,
ただ気まぐれに花屋で買ったものだ。
けれど,その淡いピンク色の花びらに,
どこか自分自身の孤独を重ねてしまう。
「愛を確かめ合う日か…」
小さくつぶやくその声は,風に溶けて消えていく。
他の人々は,笑い声や温かな手を交わしながら,公園を歩いている。
そんな景色を見送りながら,心の中で静かに問いかける。
「自分にもいつか,愛を分かち合う相手が現れるのだろうか。」
やがて,日が沈みきる前にそっと立ち上がり,
手に持っていた秋桜を風に乗せた。
ひらひらと舞い上がるピンクの花びらが,
心の中の小さな希望を運んでいくように感じた。
寂しさはまだ消えないけれど,
どこか,少しだけ心が軽くなった気がする。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?