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命の巡り合わせ

「かれん」は娘を出産するすこし前に、ほんのわずかな時間、わたしのお腹にやってきた命に夫が付けた名前。
ふと彼が口にした名前の、その華やかな響きに一瞬戸惑いながらも「それだね!」と合意したのは、シンプルに直感。

性別も、心音も確認されないまま、突然やってきて、あっという間に帰っていったあの存在がもたらしてくれた体験は、これまで誰からも何からも得ることのなかった意外で不思議なものだった。だから、いつか必要な時に必要な人の元へ。

そう思っていたら、ある時娘がしきりに犬を欲しがった。
2軒目に訪れた保護犬の施設で、着いて2日目という綺麗なミニチュアダックスのケージを見つけた。
ケージから今にも飛び出して来そうな犬、キャンキャン、ワンワンと吠える元気な子犬たち、クビから下を丸刈りにして生え変わるのを待つ犬など、それぞれ個性をアピールし合うように賑やかな部屋の中で、ひときわ静かで大人しそうな犬。

小さなネームタグには「カレン」と書かれていて、誕生日は娘と同じ年のクリスマスだった。私は思わず夫と目を合わせ、意気投合したのを感じた。その空気を察したのかどうか、娘は「この子と遊んでみたい」と言い、施設の方が外のドッグランスペースに案内してくれた。

わが家には今、娘と同じ年に生まれたカレンがいる。
娘はカレンを何よりも大切な存在だと言っていて、そんな風に思う一人娘の心が育めることを勝手ながら嬉しく思う。

お腹に来た「かれん」と、犬の「カレン」に出会えたのは私たち家族にとっての大切な運命。そこから始まる物語を、これからここに書き残してみたいと思います。

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