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ミステリ要素が色濃くなるに従って感じる、関係性描写の薄い違和感(「Nのために」第5話レビュー)

ミステリー展開が先に立って叙情的なタッチと心情の追い方がかなり甘くなってしまった印象。殺人ミステリーとして見ている人には、テンポ良く情報が増える感じはプラスに捉えられるかもしれないが、冒頭の叙情的な表現に重きを追いていた私にとってはマイナス。

沖縄にて無事、野口夫妻とお近づきになり、野バラ荘に帰ってきた希美(榮倉奈々)と安藤(賀来賢人)。西崎(小出恵介)に成果を報告し、祝杯をあげる3人だが、安藤が寝入ってしまう。そこで出てくる希美の告白「ダイビングの途中、奈央子さんのタンクのバルブ、少し、閉めた。」これ自体は、暗い家族の過去に連なる彼女の一面として作品に深みを持たせる要素だと思う。ただ、普通に聞けばそれは相当な闇で、ほぼほぼ犯罪と言える恐ろしい行動であるのに、躊躇しながらもあっさりと西崎にそれを告白している。果たしてそれほど西崎に心を許すようになったのは何故だろう。もちろん、西崎の小説をめぐる二人の会話から、互いが秘密を抱えた人間であると気付いていること、似ている面に気付いていることは承知だが、もう少し丁寧にこの二人の心が通う様子を追えそうなものである。犯罪を告白する相手となるほどの心の通じ合いが見えない中では薄い違和感が生まれるし、その積み重なりで作品も軽薄になっていくように思える。

今回のタイトルバックも海。第1話での成瀬のダイブと重なる。画面いっぱいに広がる青の美しさと差し色のショッキンピングピンク。良い。


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