夏枯れ知らず、王道・癖あり・深夜エロと秀作が並んだ2022年夏クール

2022年夏クール、期待以上に豊作でした!意外にも坂元裕二一強でもなく、王道・癖あり・深夜・サスペンス、それぞれで抜けた作品があってバランス良く楽しみやすい3ヶ月間だったのでは。ドラマは夏枯れと言われるけど今夏は強かった!配信視聴への流れが強まったのもあり、地上波の季節トレンドが当てはまらなくなくなってきてるのかな?

あと映画のラブシーンは見てて疲れがちだけど、地上波コード内のラブシーンって尺も濃度も丁度良くて最高!と思ったクールでした。笑

最終回まで完走したのは6本。好きだった順で。

MBSドラマイズム『ロマンス暴風域』 渡辺大知・工藤遥

6話しか無かったけどもう圧倒的に沼に落ちたので1位。主題歌イントロの「ラッソソラッソーファ!!」流れるだけで声にならない叫びを上げちゃうもの。どうにもならない相手に惹かれて引きずり込まれる、蟻地獄とか砂地獄とかそういうザラーっと落ちていく質感を全身で味わうみたいな体験。それが深夜とはいえ地上波ドラマでできるって凄いじゃない。

終盤、ぼんやり欠如した女性が次々に現れて端から順に関係を持っていくの、あまりに暴風域すぎて頭おかしくなりそうだったけど、そこを通っての主人公の気付きは良かったな。渡辺大知って……本当にああいう「モテてないモテ方」しそうですよね(普通に失礼かしら)

「運命」って言うと「爆笑」してくれるせりかちゃん、一体君は何だったの!ひとり深夜にのめり込めるドラマを求めている大人の皆様、心からお勧めしたいです……!子供は見ちゃダメ。

今年の最多リピート曲はこれになりそう。狂ったように聴いちゃった

日テレ土曜22時『初恋の悪魔』 仲野太賀・林遣都・松岡茉優・柄本佑

類を見ない!その一点において坂元裕二ワールド。一話完結刑事モノに見せかけた人間ドラマ、なんて単純なひっくり返しでは全くなかった。とはいえ私にはまだ咀嚼しきれてないところが多いんだよなー。

死とは別のところで、「愛する人が目の前にいなくとも、人間は思い出と一緒に生きていける」を今までも少しずつ伝えてくれていたのが坂元作品だったと思うけど、このテーマにおける集大成が『初恋の悪魔』だったのかなと。ある種、高畑勲『かぐや姫の物語』で描かれる「記憶から消える」救いの無さと対比になりうるなと感じた最終回でした。

あと「自分らしく生きていたらいつか未来の自分が褒めてくれる」も好きだったな。過去の自分を救わなきゃいけない、の感覚が間違ってるわけじゃないよね、と思いたい時があるので。

ただ全体を通して、演出か日テレか土曜10時か、外枠との相性の悪さは拭えず終わってしまった。同じく坂元裕二脚本の『Mother』『Woman』『anone』の日テレ三部作は水曜10時枠の水田演出で、田中裕子の起用方法も含めて美しくハマっていたと思うのだけど、今回は最終回に向けてバランスされたとはいえちぐはぐな印象は否めず。もっともっと視聴者がギリギリまで心を入れ込む形が作れたんじゃないか……と思ってしまうところがありました。

それも前作『大豆田とわ子と三人の元夫』が演出・音楽・主題歌・衣装、全ての調和があまりに完璧だっただけに思うことなのかも知れないけど。今作の主題曲に途中からラップが入ってくる仕掛けとか、すっごいお洒落だったけど掛け算の魅力マシマシ!みたいなところまでは行かなかった気がするのよね。その点『大豆田』のSTUTS×俳優はドラマの印象を全く壊さずに楽曲そのものとして波及する強さまであったから、凄かったよね……。まぁあれは奇跡ってことで。

とか何とか言ったけどやっぱりめっちゃかっこいいね。音楽が上質。

TBS金曜ドラマ『石子と羽男 -そんなコトで訴えます?-』 有村架純・中村倫也

全方位的に一番クオリティ高く仕上がっていたのが『石子と羽男』じゃないでしょうか。愛せるキャラクター、テンポの良い展開、飽きさせない演出、時代性のあるメッセージ、どこを取っても良質でした。有村架純と中村倫也のやり取りがいつでも小気味よくて、途中から本人達もノッてきて絶妙にアドリブと思われる間や台詞が生まれていたのも俳優ファンとして嬉しかったです。そこに子犬ちゃんな赤楚衛二を加えても、安易に恋愛の三角関係にしないところがめちゃくちゃ好感。「どうせ当て馬でしょ」と高をくくる視聴者をきちんと裏切って、友情は友情として確立してくれたのは素晴らしかったです。

テレビ東京 ドラマ25『雪女と蟹を食う』重岡大毅・入山法子

『ロマンス暴風域』と並んで「深夜×エロ×湿度」で魅力的だった作品。死への欲求と性欲と食欲、それぞれの欲望にじっとり向き合う日本映画・日本文学的な作品で良かったです。それにしてもジャニーズコード大丈夫か!と重岡大毅ファンを心配したくなるくらいの濡れ場の多さであった。ほぼ毎話って……息してるかな?笑 でもあのテディベア感と情けなさカッコ悪さを全力で演じきったのは本当に凄い。はまり役でした。

10話まるまる引っ張って、11話でようやく出てくる蟹は、日本蟹協会が全ての制作費を払っているのではないかと思うくらい美味しそうで!蟹が食べたいです!一緒に食べに行ってくれる人募集!これから季節だし!蟹!

あと毎話突っ込んじゃったのは、エンディング曲が歌詞の入りからダイレクトに「いけない恋」な湿度120%ソングなのに対して、オープニングのジャニーズWESTが欠片もエロくなさすぎて「高低差に耳キーン」な気分になること。『純愛』のHey!Say!JUMPはそれなりに色気があるんだけど、WESTに艶は無理だったか……と毎回ウケてしまってました。笑 

エンディング。2回ぐらいしただけで〜

オープニング。爽やか!笑

フジテレビ木曜22時『純愛ディソナンス』 中島裕翔・吉川愛

高校教師モノかと思いきや、高校編は2話で完結、早々に社会人編開始で主人公が気付けばほぼ半グレみたいな組織に編成されている、という気合の入った裏切りと勢いを見せてくれた作品。

純愛モノと見せかけて、考察寄りのドロドロサスペンスが本筋というのは非常に今っぽくて、しっかり狙いを定めた企画をやってるな、という点で好感が持てました。そして私の愛する「トンチキ木10らしさ」もちゃんとあった!1話では感じられずもどかしかったのですが、3話以降は良きトンチキに溢れていて愛らしかったです。すべてを差し置いて注目すべきは、半グレ親方・光石研のアンディーウォーホル風ポートレート。ほぼ毎回しっかりと映してくれる徹底ぶりに感謝。あれ撮影後誰か持って帰ったのかなぁ。本当にウケるから50万円くらいで売るといいと思う。

とはいえ、トンチキサスペンスとしては上手く回っていたものの、物語の主軸になってるはずの純愛は最終的にどうでも良くなってしまったのが残念。高校編にしても中盤にしても、中島裕翔がピアノを弾きつつ吉川愛と恋を育むシーンはグッと来るものがあったんだけど、終盤はもはや入れ込めるところは無くなっちゃったなぁ……。「私、(先生のために……)先生と別れる!」みたいな展開、何度もあったけど大抵中途半端すぎて白けてしまった。

あと狂母・富田靖子が凄かったですね。笑 トンチキと言いつつも基本的にはシリアスリアリティ路線で全員がお芝居している中、富田靖子だけが脂ぎったコッテリ狂人芝居、という異質さが演出として新鮮でした。一人だけ芝居の方向性違うのってアリなんだ・成立するんだ、という発見。あんまり今まで見たことなかったので今後そういう演出が増えてきたりするかも?

これいい曲だったなー。サビの盛り上がりが好き!裕翔くん、大きくなって……。

NHKドラマ10『プリズム』 杉咲花・藤原季節

NHKドラマ10という最も安心できる枠の一つ。主人公(杉咲花)の父親はゲイで新しいパートナーと暮らしており、一方で相手役(藤原季節)は過去に男性と付き合っていたことがある、という設定。基本的にはNHKらしい丁寧さで各人物の心情が描かれていて良かった。「父親がゲイであったりして、自分には理解があると思っていたけどやっぱり動揺している」と素直に語るところとか、とても良かったな。ただ中盤、何故か過剰にメロドラマ風になっていった瞬間があって「あれ?」と思ったりした……。幼馴染が家に押し入って無理やりキスしてくるところとか、結構本気で怖くて嫌だったなー。

基本的に杉咲花・藤原季節・森山未來の3人はお互いに優しく、慈しみの空気がずっと漂っているのに対して、親世代の無理解と差別がかなりダイレクトに描かれていて「流石に悪すぎないか?」と思いつつも「理解が進んでるったって全然」「マイノリティが晒されている世界はこんなもの」と言われているような気がして辛い気持ちになった。マイノリティに直接的な攻撃を仕掛ける藤原季節の父親(銀行お偉いさんの設定)について、ゲイである杉咲花の父親側が「彼は分からないものが怖いんだよ、仕方ないよ」と語る部分があるんだけど、何でいつも傷付けられてる側のマイノリティが優しくなってあげなきゃいけないんだろう、とムカついてしまった。傷付けられたら泣いたり怒ったりしたっていいと思うのに…‥。

原由子の主題歌が独特の世界観を作ってたなー。曲名も癖あり!

あとは全部は観られてないけど好きなやつ!

『空白を満たしなさい』

何か最終回の録画がどっか行ったの!一番はまってたくらいなのに悲しすぎ。NHKプレミアム入って追加しますmm

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』

別名『しぬしぬエブリバディ』『しぬどんどん』。
義経死んでから思いっきり見逃してて、あろうことか頼朝落馬さえ観てないんですが。先日の畠山討伐回から復活して大変に泣きました。何だあの中川大志の名演技……素晴らしすぎる大河ドラマ……。残酷と無念の極みを合間の三谷コントがめちゃくちゃに引き立たせるんですよね。笑える一時が来たら「ああもうこの人死ぬじゃん……」と落ちきる覚悟を決める視聴者達、の図が既に出来上がっているのもまた残酷。地獄展開からの地獄展開続き。リアルタイムの日曜8時に観るとね、食後の胃に来るのよね……。でも面白いの……。

もはや今から観ても大丈夫と言えるので本当に一人でも多くの人に観てほしい。それにしてもまじで端から順にみな死にます。


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