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最終章に向けて、歯車の中心が主人公から脇役へ移動していく(「Nのために」第8話レビュー)

第8話、様々な時間軸の中で西崎(小出恵介)の存在感が濃くなっていく回だったように感じる。

2014年設定の中で進められる西崎と希美(榮倉奈々)のシーンで、この二人の関係性が後付けで深くなっていく感覚は意外といいかも知れないと思った。第5話レビューにて、突然の二人の関係性の深まりにかなり違和感を持ったが、話がここまで進んでくると二人の絆の静かな強さが後出しで加えられていき、それが一つの盛り上げ要素になっているように感じる。確かに学生時点で なぜ絆が深まったかは明らかにされないが、事件時そしてその10年後の関係性は丁寧になぞられているように思える。

興信所を雇ってまで希美を気にかける西崎、そして送られてきたお金を返しに西崎に会いにくる希美。興信所を雇ったことにも特段の驚きや不快感をあらわさないのも、細かな部分ではあるが西崎に対するかなり深い理解から来ているようにも思える。

それに対して、「弱った姿を見せたくない、元気な姿を覚えていてほしい」と語られるのが安藤(賀来賢人)。希美にとっては西崎も安藤も友達ではあるが、真っ直ぐな恋心をあらわしてくれる、寄り添おうとしてくれる安藤と、恋愛感情を最初から抜きに、暗くてざらついた過去を互いに共有する一友人としての西崎の対比が見えてくる。愛してくれる人よりも、一人の友人にこそ晒け出せる弱さや苦しさがあるのだ。

同製作陣ということで「Nのために」「アンナチュラル」を並べて考えることができるが、ストーリー展開にも少し似通っている部分がある。「Nのために」における西崎と、「アンナチュラル」における中堂(井浦新)。女性主人公の過去や働きがドラマ前半の中心要素として動いていくが、最終章に向かうまでの一番大きな歯車、後半の物語の中心を実施に引っ張るのは脇役男性たち。全話通して一人の視点から描くのではなく、徐々に視点をずらしていくさまが似通っていると感じた。

タイトルバックは希美と成瀬が一緒に過ごした東屋。高校生当時のシーンとは違い、色彩を抑えた海と空の色。


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