窮鼠日記19 悟浄出世(ミクシィに過去に書いた日記)
2007年06月04日23:27
今まで読んだ中で、一番良く読み返してるのは中島敦の『悟浄出世』という短編作品だ。高校の教科書に良く載ってる『山月記』の方が有名だが、自分はこっちの、単純なスタイルの冒険譚の方が好きなのだ。
西遊記に出てくる妖怪の沙悟浄が、悟空、三蔵法師らに出会う前に、流沙河(りゅうさが)という河の中で鬱々と…自分とは何か、存在するとはどういうことか?真理とは何か?という哲学的な苦悩でにっちもさっちもいかなくなってしまって、河の中に逼塞する妖怪のインテリ達を訪ね歩き、彼らとの対話で自己存在のあり方を思索してゆく、という話。
物語の舞台が河の底なので川エビの化け物とか、ナマズの化け物とか、水棲生物の妖怪の哲学者(?)たちと悟浄が問答を繰り返すというアイディアが面白くて、何回も読み返している。
中島敦は33歳で夭折したので、この作品は若いうちに書かれたゆうことになるのだが、文章に一切無駄な部分がなくて、天才性というか、凄みを感じてしまう。
西遊記を読んで、その話を膨らませて、こんなにワクワクする物語を独力で創り上げるバイタリティも素晴らしいと思う。
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