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「明日のために。リハビリトレーニングを頑張る」思い込むタイプの人

84歳の母は、この数年、大病したり、骨を折ったりして入院を繰り返した。
振り返れば年相応な出来事であった。

骨折の場合。
骨粗しょう症ではないが、横断歩道ではないところを渡ってこけて大腿骨骨折。
幸いにも田舎道だったので、見かけた車が止まってくれて救出。救急車でそのまま搬送されたようだ。ちょっと呆れたものだが、老人ってそんなもの?

手術やリハビリの後は入院中でも「動け動け」と言われるらしい。
暇ができると(って基本暇なんだけど)病室から出て行く。
時には買い物カートのように点滴をガラガラ引きながら、番長皿屋敷のように
「1往復〜2往復〜3、4、5。。。」
と廊下の手すりを掴んでトレーニングしていた。
そして名誉の称号は
「ふじみ(不死身)さん」(笑)

父からこっそり聞いたところによると、看護婦さんたちは
「がんばるね〜」(点滴と一緒にすっころばないでね!)
と声をかけてくれたそうな。きっとすごい形相だったのかも。
あしたのジョーか力石か。
「明日のために!早く退院できるように!」
ただし、彼女の夫である私の父は丹下段平タイプではない。
こっそり私に告げ口。
「なんかさ、『褒められちゃった』って嬉しそうなんだよ、お母さん。
それでますます頑張っちゃってさ。。。ほどほどに、って言っても聞かない。
運動するとお腹も空くし暇も潰せるし、ってとにかく元気でねぇ。。」
そんな事情もあり、父は必要以上の見舞いは避けていた。
そして、ここぞとばかりに『ファイター』が退院するまでのあいだ、優雅に一人暮らしを満喫していた。
趣味のオーディオで邪魔されずにクラッシックを聞いたり、朝静かに一人コーヒーを淹れたり、好きな時間に好きなだけ散歩に出かけたり。

家でお惣菜をつまみながら、父はつぶやく。
「医者からは『ほどほどに』、つまりそこまで頑張らなくてもいいんですけど、、
と言われるんだけどさ、本人がやめないからなぁ。。」
褒められて俄然必要以上に頑張る性格は、それはそれでありなんだけど、忙しい現代にはゆとりとかz世代を見習うのもいいかも、と思う。

母自身は、トレーニングすればするほど傷は早く治る、と思い込んでいる。
そう、この激しい思い込みが母という人なのだ。
超思い込み人間ってやつだ。
自分で解釈をして思い込んだことは、意志を曲げずに通す。
多分、8割の人は「ほどほどにね」と声をかけ
2割は「よく頑張ってるね」と挨拶がわりに言うと思うが
この2割の方の人の意見だけに耳を傾ける。
だから医者がこの2割に入っていた場合は「ホラ!」と今以上に俄然頑張って収集がつかなくなる。
皆さんの周りにも多分何人かいませんか?こういうタイプの人。

今は完全治癒して家で毎日健康生活。
「毎日ジムに行ってリハビリしてますから。あたしはまだ生きてますよ」
たとえ寿命が尽きて死んでも
「まだまだ死ぬはずがない!」
と幽体離脱後にジタバタしそうな人です。

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