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福島、失われる記憶と故郷のモノローグ。大切なのは、どう生きるか


NHKのドキュメンタリー番組、福島モノローグを見た。
2011年の原発災害時に避難をせず、福島県富岡町に残り、動物たちの世話をして生きる松村さんの13年のドキュメンタリー。心打たれた。

福島に残った松村さんが、のこされた生き物たちの世話をして共に生きる様子は、海の彼方の戦地で生きる人々の現実と、だぶる。

松村さんは、意志が強い。田んぼを整備する松村さんに、インタビュアーが尋ねる。
「田んぼ、戻りますか?」
「戻すんだ。戻さなきゃなんね」
死ぬほどの努力と強い志を、さらっと言う。しかも笑顔で。
福島の人は辛いことを、辛ければ辛いほど、笑顔で何ともないことのように話す、と聞いたことがある。

原発災害から6年目。
復帰作業で富岡町にやって来た人々は、別の土地から来る若い開拓者とその家族たち。松村さんは寂しげに言う。
「新しい人たちがこの地に住み着いて、その子供が生まれて、100年200年経てば『ここが故郷』となり新しい町になる」
新しい夢と共にこの地にやってくる開拓者たち。
古(いにしえ)のブラジルに渡った祖先、北海道に移住した本州の人々、アメリカではゴーウエストで西を目指した人たち。そんな開拓者の歴史と守り人の歴史は複雑に交錯する。

困難には立ち向かうしかない。
「どうやって生きたかだ」
松村さんは、いつもさらっと言う。
13年のあいだ孤独に生き抜いた重い言葉が番組を締めくくる。

自分は何のために生きて、何を思いながらいなくなるのだろう。

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