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眼鏡屋で働くなら知っておきたいスキル 1年生用(質問編)

このnoteはおそらく世の中にない
「眼鏡屋で働く人だけ」に意味がある情報です。

眼鏡の処方には完全な正解はありません

このnoteで大切なことは、しっかりと質の良い「質問」ができるようになり
処方後の説明をお客さんにわかりやすく「伝えられる」ことを目的としています。


⬇️視力測定に慣れてきたけど「基礎をもう少し固めたい」という方は、
こちらの記事から読んでいただけると理解が深まります。


筆者経歴
某大手眼鏡屋チェーンで10年以上勤務し、
ブログでは自分の失敗体験を恥ずかしげもなく発信しています。


⬇️こちらのアカウントでは眼鏡と心理学をメインとした発信をしています。


⬇️こちらは眼鏡の視力測定に特化した発信をしていますので、
気になる方がいたらフォローしてみてね。

はじめに

眼鏡処方の基礎であり奥義は、
「今の眼鏡の何に不満があり今回はどうしたいのか?」を深く聞き出し
出来ることと出来ないことを説明して「理解」してもらえるかどうかです。


数値的な理論も大切ですが、もっとも大切なことは
お客さんの要望を聞く「質問力」と「説明力」にあります。

今回はこの「質問力」に特化した内容で解説したいと思います。


質問力とは?

質問する医者

そもそも質問力とは、相手から必要な情報を引き出すために
「観察」→「質問」→「共感」→「質問」を繰り返す心理テクニックです。

質問には「良い質問」と「悪い質問」があり、簡単に言えば野球などの
キャッチボールのイメージですね。

相手の話すレベルを見極め、取りやすいボール(話題)を投げて
相手が(会話を)投げやすいように構えるのが質問上手です。

人はそもそも誰かに話を聞いてもらいたい生き物であり、
他人の話には興味がないことを前提にするとわかりやすいですね。


良い質問の方法


「良い質問」はまず相手の話を「聞く」ことから始まり、
相手の話に共感して相手の話を「ここまで理解してますよ」と
さらに質問を繰り返すこと
を言います。


悪い質問の方法

「運転はしますか?」「PCはしますか?」「趣味はなんですか?」
「どんな環境で過ごすことが多いですか?」「コンタクトは使いますか?」など。

何が良くないかというと、今回の眼鏡の用途を絞って質問していないからです。


例えるなら、「昨日ご飯食べましたか?」「今日歯磨きしますか?」くらい
空気読んでない質問ですね。


質問というのは、「今回の要望は〇〇だから〇〇しますか?」と深掘りするもの。

まずは主訴となる「負の要素」を聞き出し、
そこから本人も気づいていない「副訴」を聞くために「〇〇はしますか?」と
質問するのがスマートな質問です。

余談ですが眼鏡屋で質問が上手い人は「人間関係でも良好な関係を築く」のが
上手い気がします。


視力測定を始める前に聞きたい「質の良い質問5選」

子供の診察する医者

測定を開始する時に「問診」というものがありますが、質の良い問診をしないと
測定の時間が長くなったり精度が下がってしまいます。


ではまずどんな質問をすれば良いのか?大きく分けて5つ紹介します。

今回はどこを見えるようにしたいのか?
今の眼鏡は何年くらい使ってるのか?
今の眼鏡の何が不満なのか?
今回はどこからどこまでを見たいのか?
掛け替えはしたくないのかできるのか?

今回はどこを見えるようにしたいのか?

眼鏡を作る上であたりまえの質問に聞こえるかもしれませんが、
意外とお客さんは「見える」ということに関して漠然としています。

人によっては「日常用」とか「普通に使う用」とかざっくりした
返答が返ってくることも多いです。

なので質問の仕方としては、

「何をする時に使いますか?」

と聞いてみましょう。

すると「運転する時」とか「手芸する時」とか「PC用」とか
使いたい場面を想像して返答してくれます。


しかし眼鏡は万能なアイテムではなく、年齢や視力の出方によって
全ての要望に応えることができないことも多い
ですよね?

そこで要望になるべく添えるよう、さらに深く質問をしていきます。


今の眼鏡は何年くらい使ってるのか?

眼鏡は使用年数やレンズの劣化具合、眼鏡の掛け方やフレームの形状によって
同じ度数でも見え方が変わります。

「見えにくい」と一口に言っても、レンズがキレイになれば度数を変えなくても
見えやすくなることも多いですし、同じ度数でも強く感じることがあります。

そこで使用年数が分かれば、どれだけ今の眼鏡に目が慣れていて
年齢から推測して、その変化に順応できるのか?が予想できるのです。

若い方は大きく度数を変化させても慣れやすいので要望に添いやすく、
年配の方は脳が変化になじむのが遅いので大きな度数変更は慣れられないことが
よくあり、要望に応えたとしても「元に戻してくれ」と言われることが多い。

なので年配の方は度数変化をなるべく小さくし、よほどの要望があるのなら
自分の意思で「変えたい」という言葉を聞くまでは大きく変えないように
しましょう


変化に対する前向きな姿勢が聞けたら慣れやすい方法をアドバイスするなど
するのもいいですね。
(KBと併用しながら脳と目を慣らしていくなど)

今の眼鏡の何が不満なのか?

眼鏡を作りにきたものの、今の眼鏡にそこまで不自由していない場合も多い。

眼鏡を作るタイミングって結構色々あって、度数を変えなければいけないという
眼鏡屋の固定観念は捨てておかないといけない

⬇️よくある眼鏡屋に寄った理由

たまたま近くに寄ったから
セールやってたから
フレームやレンズや傷んできたから
今の形に飽きたから
予備が欲しいから
なんとなく眼鏡見たいだけ
今の眼鏡が見えにくいから

ノリで買う人もたくさんいますが、一応視力測定はすると思いますので

なぜ今回作ろうと思ったのか?
今の眼鏡に不満はあるのか?

この2つは必ず聞いておきましょう。

同じ度数で作製することになっても、フレームの形状や今までのかけ位置、
レンズの傷つき具合でも見え方が変わる
ことを説明できるからです。

もちろん今の眼鏡に不満がある場合は、改善できる方法を提案するために
今の眼鏡の状態やかけ位置、レンズのダメージ具合や使う用途をしっかりと
聞き出す質問を深掘りしていきます。


今回はどこからどこまでを見たいのか?

度数を変えることになった場合、今の眼鏡で見えていたものが
見えにくくなることもあります。

そんな時は、

新しい眼鏡はどこからどこまでを見たいのか?

これを聞くことで新しい提案に導くことができるからです。


今までの眼鏡は単焦点で、遠方は見えるが近方が見えにくいという50代の人には
累進レンズか手元は眼鏡を外す方が良いなどの提案ができます。


今までの遠近両用でPCが見えにくいという60代の人には、
運転をしなくてもよければ中近両用や近々両用、
もしくは遠方度数を緩めた遠近などの提案が浮かびます。


近用でOKの場合も何センチから何センチまでを見たいかによって
累進レンズがいいのか単焦点レンズがいいのか変わります。


大切なことは、

どこからどこまでは見えてそこから先は違う方法で見る

この方法をお客さんに提案し、体験してもらって選択してもらうこと。


この距離の質問をおろそかにすると度数はおろかレンズの種類も決まらず
迷宮入りして、なんとなく見える眼鏡が出来上がってしまうので
しっかりと目に見えるように「ここからここまでの眼鏡」と説明しましょう。


掛け替えはしたくないのかできるのか?


眼鏡のレンズには設計上見え方の限界があります。

どんなレンズにもメリットとデメリットが存在するということですね。


そこで、

眼鏡をどうしても1本でまかないたいのか?
掛け替えでもOKなのか?

この2つは大切な質問です。

なぜなら「1本でできることはこの提案までです。」と伝えることができ、
「じゃあ掛け替えしようかなぁ」とか「じゃあ1本でできる限りでOK」と
選択してもらうことができるからですね。


提案を体験してもらい、お客さんの意思で決めた度数とレンズ設計なら
よほど外さない限り処方交換も起きないですし、
一貫性の法則が働き使いこなそうとがんばってくれます。

お客さんは何に不満を感じるか?というと、
提案がなかったことや自分の意思で決められなかった場合がほとんど。


「できることはできる」「できないことはできない」と説明しながらも、

「でもこうすればあなたの要望に1番近いですけど、どうでしょう?」と
提案と選択を2つか3つ出すことで選ぶ権利が与えられ納得するのです。

もちろんその提案が「本当に上質な提案」でなければいけないのは
大前提ですけどね。


眼鏡屋で働くなら知っておきたいスキル 1年生用(質問編)」 まとめ

眼鏡をおすすめする男性

測定を覚えたての頃は7Aを出すまでの予備検査で余裕がないものです。

でも仮枠装用は無限に答えがないので、なるべく答えに近づけるためには
今回の5つの質問を覚えて実践で使ってもらえれば度数決定の目安に
なると思います。

近視や遠視、乱視やミックス。

レンズ設計のメリットデメリットなども把握していなければむずかしいことも
ありますが、きちんと質問力とそれぞれの法則を覚えることが
高速高精度測定マスターへの道となります。

マガジンに視力測定に関する法則は全て収録してありますので、
ぜひ参考にしていただいて少ない年数で莫大な経験値を得てくださいね。


最後まで読んでいただきありがとうございました!

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