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寄生獣は四半世紀経っても問いかける。

#ネタバレ といえばネタバレなのですが、作品内で『寄生獣』と使われるのは、人類に対してなんです。寄生生物はパラサイトと呼ばれているから。

25年ぶりくらいでしょうか。全巻読み直しました。ガラケーもスマホも出てこなくて、公衆電話が使われている時代ですね。90年代に読んだ時は、もちろん気にせず読みました。日常ですから。

①寄生生物はどこから来たのか。存在意義は何か?
②環境問題と人類
③人類はどこから来てどこへ向かうのか?

3つの問いの内、「①」は田村玲子を死なせたことで、辿り着けなくなったと思います。「②」に関しては、問題点を目にしつつも打つ手がなく答えが出されていません。「③」に関しては、殺人犯の浦上が彼の「共食いの思想」を語りますが、誰の心にも届きませんでした。

天敵と共食いを出し、環境問題も扱い、人が増えすぎたことを語ります。泉新一が巻き込まれた事件をいかに生き延びたかが10巻をかけて語られます。壮大な問いに答えるのではなく、細部を丁寧に描き、主人公の手が届く範囲の物語にした。

なぶり殺すような「共食い」の思想ではない。天敵としての「捕食」でもない。泉新一は思想的な背景は無いけれど、「殺さない」ことを選びます。「共食い」とも「天敵」とも違うんだと。

差別も偏見も虐殺も戦争も起きるけれど、たしかに「共食い」を目的にしないし「天敵」であろうとして起きるものでも無いですね。

「殺さないし食べない」という、自明のことが壊れた世界を描いて、「共食い」「天敵」は断るという当たり前の話を描くために、何人も犠牲者が出ました。幾つもの普通の日常が壊されました。

人類は天敵がおらず、環境を壊しながら生きています。本作品は天敵を設けて緊張感を持てと言いたいのではなく、「これでいいのか」と読み手に問いかける力があります。神を殺して、伝統的な宗教の影響力が落ちた後の、人と倫理の物語。

#マンガ感想文

👆ヘッダーはダラズさんから、お借りしました

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