離島のコンビニ

2019年にセブンイレブンが沖縄県に進出して3社体制になったことが記憶に新しいが、コンビニは物流の効率化を図り、まとめて出店することで店舗を増やしてきた。交通の便が悪い離島は出店が遅れ、人工が多い島でも佐渡島のローソン、小豆島のセブンイレブンのように1社体制が多くなっている。ローカルチェーンの買収による転換店も多い。小豆島を訪問して興味が湧いてきたので、軽く調べてみることにした。

調査対象は本州、北海道、九州、四国、沖縄本島を除く日本の有人離島とし、人口が多いところを優先的に調べた。調査にはロケスマを利用し、大手3社のほか、北海道に強いセイコーマート、中国地方に強いポプラなども含む16チェーンが調査対象となるが、Yショップは対象外となる。なお、掲載の地図画像はロケスマのスクリーンショット(地図はGoogle)だが、縮尺の都合で全店舗が載っていないことがある。人口などの統計データは、日本離島センター編「SHIMADAS」(2019)による。

ロケスマにコンビニとして登録されているチェーン(今回の調査対象)

淡路島(人口134,717)

セブンイレブン:7店舗
ファミリーマート:24店舗
ローソン:23店舗

最も人口の多い離島である。本土と高速道路で接続されており、3大チェーン全てが出店している。セブンイレブンは関東地方を中心に都市型の店舗展開をしていたこともあり、ここでも出店が最後の2014年となった。

天草下島(人口71,523)、天草上島(人口26,317)

セブンイレブン:6店舗
ファミリーマート:10店舗
ローソン:4店舗
デイリーヤマザキ:11店舗

近接しており、橋で接続されているため、まとめて紹介する。天草下島が人口2位の離島である。大手3社は天草市役所周辺を中心に展開しているが、デイリーヤマザキは島全体に散らばっている。

奄美大島(人口59,828)

ファミリーマート:6店舗

住所は鹿児島県だが、県庁所在地は沖縄県の方が近い。エブリワンからの転換店。エブリワン時代からのパンや総菜は転換後も販売しているようである(ブログ)。他にアイショップが4店舗ある。近接する徳之島にもファミリーマートが出店している。

佐渡島(人口57,255)

ローソン:8店舗

セーブオンから2018年に転換(プレスリリース)。

石垣島(人口47,564)

ファミリーマート:19店舗

観光客も多く、店舗が集中している。ホットスパー/ココストア(1986-)とファミリーマート(2014-)が競合していたが、2015年の合併を受けて現在は1社体制。
沖縄県内離島におけるコンビニ店舗数の推移については、宮内久光・大城美樹の論文が詳しいので参照されたい。論文によれば、ファミリーマートの進出を断念させるためにホットスパー陣営が大量出店でコンビニ飽和状態を作り上げ、それにも関わらずファミリーマートが出店したことで合計30店舗になるも、合併で赤字店を整理したことで現在に至るという。

宮古島(人口45,625)

ファミリーマート:18店舗

沖縄ファミリーマートが初めて進出した(2000年)離島。200店舗の配送が基本となる大型配送センターではなく、10店舗程度の出店でミニ配送センターを設置、自社工場も併せて設立することでフランチャイズ方式での出店を可能にし、既存のホットスパーに対抗した(先ほど述べた論文)。2015年にファミリーマートがココストアを買収し、2016年に転換したことで1社体制に戻った。宮古島から架橋されている伊良部島にも1店舗あり、これはファミリーマートの出店した店舗(架橋は2015年であるため、それまでは船で配送していたと思われる)。

その他沖縄県離島

ここまで紹介した島のほかに、久米島と伊江島にも2店舗ずつファミリーマートが出店している。久米島はいずれもホットスパー/ココストアからの転換店だが、伊江島は1991年にホットスパーが出店した後、2001年にファミリーマートが出店しており、競争関係にあった(先ほどの論文)。伊江島は沖縄本島に近く、船での配送が可能であったと思われる。このほか、沖縄本島からの架橋島である宮城島にローソンが1店舗出店。

福江島(人口34,419)、中通島(人口18,121)

ローソン:8店舗

全てポプラからの転換店(記事)。元はRICなど(記事)。

対馬島(人口31,301)

ファミリーマート:1店舗
ローソン:2店舗

ファミリーマート対馬厳原大手橋店はココストアからの転換店、ローソン対馬桟橋店はポプラからの転換店(個人サイト)。比田勝港前の免税店に併設されたポプラ(プレスリリース)も2018年4月に開店したが、韓国人観光客の減少を受けて2020年10月に閉店したとの情報(Twitter)あり。

種子島(人口29,847)

ファミリーマート:2店舗

エブリワンから転換。ほかにアイショップが6店舗。屋久島にはいずれも出店していない。

小豆島(人口27,927)

セブンイレブン:6店舗

サークルKサンクスだったが、エリアフランチャイジーであったサンクスアンドアソシエイツ東四国(現アイル・パートナーズ)が2013年3月にセブンイレブンに鞍替えして誕生した(日経新聞)。なお、四国へのセブンイレブン出店は同社の鞍替えによるものが初となった。セブンイレブンは積極的に離島に進出しないだけでなく合併も無く、離島に同社だけが出店しているのは珍しい。アイル・パートナーズは資本関係こそ無いものの社長が琴電社長を兼任しており、土庄港が近い4店舗ではIrucaが利用できる。

直島(人口3,105人)

セブンイレブン:1店舗

小豆島と同様の経緯でセブンイレブンとなった。

しまなみ海道周辺

橋が通っている島には大手3社がばらばらに出店。このほか、近接しているものの橋が通っていない生名島にポプラ1店舗、弓削島にデイリーヤマザキ1店舗が出店している。ローソンに転換されたポプラの一部は架橋前に開店した店舗もあるが、ほとんどの店舗は架橋後に開店している。生名島・弓削島も距離が近く、配送がしやすい。

壱岐島(人口26,750)

ファミリーマート:2店舗
ローソン:3店舗

ファミリーマート2店舗のうち1店舗はRICマートとして開業した転換店。ローソンはポプラ・生活彩家からの転換店。

その他長崎県離島

平戸島にファミリーマート3店舗とセブンイレブン1店舗、生月島にファミリーマート1店舗。
西海市の大島(架橋島)にファミリーマート1店舗。

利尻島(人口5,090)、礼文島(人口2,773)、奥尻島(人口2,690)

北海道の離島で人口の多い3島は、どこもセイコーマートが出店している。このうち利尻島・礼文島については船が発着する稚内市にすらコンビニ大手3社が進出していない状況になっている。

見島(人口864人)

ポプラが2020年に開業。JA山口県がフランチャイジーとなり、物流もJAのものを利用している。商品購入の際に、購入代金の別途1割を本土からの輸送費として徴収される(レシート画像を見ると、「ユソウヒ」として商品とは別に徴収)。(山口県資料

大手コンビニ未出店の離島

隠岐諸島は島後(人口14,608)など人口が多いなか調査対象のコンビニは1店舗も出店していないが、ヤマザキショップはある。
屋久島(人口12,319)は種子島のところで書いた通り未出店。地形による都市の構造が影響したか。
伊豆諸島は大島(人口7,884)など比較的人口の多い島も多いが、未進出。本土から距離があることが大きく影響していると思われる。

移動販売

コンビニ以外の商店も存在せず、買い物難民を支援する目的で移動販売車で営業している事例もある。
例)備前市の大多府島と鴻島で移動販売するセブンイレブン備前伊部店
おまけ)離島ではないが、沖縄県国頭村のコンビニ空白地帯にファミリーマートが自動販売機を設置した事例

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