代表

代表するということ、応援するということ

6月29日 金曜日。実に2大会ぶりにサッカー日本代表がW杯決勝トーナメントへの進出を決めた。

直前のハリルホジッチ前監督の解任騒動、欧州組の相次ぐ不調、ほとんど勝利のなかったW杯前の親善試合など、前評判はかつてないほど悪かった。

それに対して、実際に大会が始まると、強豪コロンビアへの勝利、セネガルとの熱いシーソーゲームなどを通じて、みるみるうちに代表への評価は高まっていった。

そんな中行われたGL第3節ポーランド戦。

日本は0-1での敗着となったが、同時刻に開催されたコロンビア対セネガルの結果で勝ち点、得失点差ともにセネガルと並び、最終的にはイエローカードなどから換算されるフェアプレーポイントの差で日本が決勝トーナメントへの進出を決めたのだ。

ただ現在、この決勝トーナメント行きが決まった第3節のポーランド戦での日本の敗着が世界中で物議をかもしている。

西野監督は後半37分MFの長谷部誠選手の投入により、この試合の方向性を確定させた。他会場のコロンビアとセネガルの試合状況を踏まえて、無理な攻めは行わず、失点をしないこと、イエローカードをもらわないことで0-1で負けている現状を維持することにしたのだ。

ただし、この策には大きなリスクがあった。日本が点を入れられてはならないのはもちろんのこと、セネガルが1点をとってコロンビアに追いついたら、その瞬間に日本の決勝トーナメントの進出への道が閉ざされる可能性があったのだ。いわゆる自分たちの力だけではどうにもできないリスクのある賭けに西野監督は出たのだ。

もちろん、この展開になり、すでに勝つ気を感じさせない日本の試合は贔屓目に見ても、何の面白みもなく、つまらないものだった。ただ練習のように、ディフェンスラインと中盤でボールを回すその姿には、会場では大きなブーイングが鳴り響いた。

試合が終わり、見事に賭けに勝つ結果となった日本だが、そんな”つまらない”試合展開をW杯で見せたことから世界中のメディアが批判の声を上がっている。

海外メディアからは

「茶番だ」「恥ずかしいサムライ」

Twitter上でも 

「サッカーに対する冒とくだ」

「決勝トーナメントでぼこぼこにされてほしい」

というような意見が数多く上がっている。

確かにそういう批判の声はわかる。わかるのだが、それでも僕がこの試合で最も感じたのは西野監督の覚悟だった。

もし仮に、負ける試合をすることを決めてGLを突破できなかったら、どれだけメディアや国民から叩かれただろうか、世界中が彼の采配を愚行だとみなしただろう。それでも誰よりも結果を求め、そのためにとれる最善の手段を考え抜き、苦渋の決断でもそれを選んだからこそ、このGLの突破はできたことではないのか。

攻めないでいいのかというようなベンチからの疑問の声もあったようだ。それでも臆することなく、すべての結果の責任を背負い、自分がとんでもなくバッシングを受けるかもしれないこの厳しい意思決定をした。結果論でしかないかもしれないけれど、西野監督のその決断への勇気と結果への姿勢、責任を背負うリーダーとしての覚悟にはほんとうに頭が下がる。

僕はサッカーが好きで、Jリーグでも特定のクラブを応援しに行ったりするのだが、サッカーの応援をするたびに思うのは、自分には何もできないのだという無力な気持ちだ。(もちろんポジティブな気持ちもたくさんある)

選手として試合に貢献することもできなければ
監督として、試合を動かすこともできない
スタッフのように選手のことをサポートすることもできない

ただ見ているだけ、頑張れと心の底から声をあげることしかできないのだ。何もできなくても、それでも喉から手が出るほどに勝利がほしいのだ。

あれはよかった、こうしてほしかった、このやり方はよくない、この交代にしてほしい。意見や議論を交わすことはサポーターの醍醐味であり、決して悪いことではない。

でも最後の最後には、その決断や、必死で戦う監督や選手へのリスペクトをもって、応援してほしいのだ。たとえ考えや意見が違っても、それでも頑張れと選手たちのことを応援してほしいのだ。

今回の件でいろんな葛藤や議論があるのはわかる。最後まで勝ちを求めた面白い試合が見たかった。とてもわかるのだ。でも、誰よりも努力をし、自分たちの人生をかけて、日本を代表して戦っている選手たちがいる中で、次は負ければいいとか、そういう心無い言葉を吐くのはやめてほしいと思うのだ。

だから、今回のポーランド戦での采配や戦いを僕は心からリスペクトする。何よりも決勝トーナメントに進出し、これからの1週間をまた楽しみに待つことができることが何よりもうれしいなと感じるのだ。

次の相手は優勝候補ベルギーに決まった。ここで番狂わせが起これば歴史が変わる。最後に僕の好きなサッカー漫画の名台詞を引用する。

『試合前に有利も不利もねえ。スコアは常に0-0から、誰に対しても平等だ』

がんばれ、ニッポン!!


大阪大学の理系学生(休学中) アフリカが足りないという言葉に魅せられ、ルワンダに4か月間のインターンシップに来ています。主にこっちでの生活で感じることを徒然なるままに綴っていきます。