もったいない
私の嫌いなワードランキングでトップ10に入るであろうこの言葉。12月になるとより一層聞く機会が増える。
うん、もう、聞き飽きたわ。
年末の大掃除、断捨離やら整理整頓をするようになる中、部屋だけでなく居間の掃除もしていると、大抵要らないであろうものが出てくる。
その際、それらをわたしが“要らない袋”につっこもうとすると、
「ちょっと待って!!!」
という声が飛び交う。
でも誰も使ってないじゃん。
なんて言おうものならヒスな母や姉が反論してくる。
「まだこれ使えるじゃん。」
「まだこれ着られるじゃん。」
「まだこれ綺麗じゃん。」
臭い布巾やら裾がほつれたニットやら、
誕生日プレゼントか何かでもらったはいいものの開封前のハンドクリームやら。
このにおい苦手なんだよな〜とか言って使わなかったのはお前だろ。
それなら私が捨てる前に誰かに売るなりあげるなりしてくれればいい。
もったいないから捨てないなら何かしらに役立ててほしい。何にも使わないのならそれは場所を取るだけの邪魔者になる。
もったいない。という言葉を聞くと、音楽をやめた時を思い出す。
お世話になったライブハウスで、いつも通り演奏して、いつも通りお辞儀して、ありがとうございました、と言ってステージを去った。
ノルマの精算をして、ふと今思い出しました、みたいな顔で「そういえば、わたし今日でやめるんですよね〜」とブッカーの人にヘラヘラ話した。
なんで?と聞かれて理由を述べて、そっか。と言われて頷いて、その後に言われたのが
「もったいない。」
嫌な言葉だったはずなのに、なぜか心にストン、と落ちた。
わたしはどうやら、彼からしたら使える人間だったらしい。
天才なあの子も、わたしに顔で訴えた。
「もったいない。」
嫌な言葉であることに変わりはない。が、同時に嬉しかった。
母と姉に想ってもらえたあの濡れ布巾も、ほつれたニットも、踵が削れたあの靴も、あの時のわたしと同じ気持ちだったのだろうか。
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