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子育ての「幸せ感」を伝えていきたい【港区議会議員 清家議員×カラダノート代表 佐藤】

当社は「家族の健康を支え笑顔をふやす」を掲げ、少子高齢化の社会課題の解決を実現したいと考えています。
少子化を改善するにあたって官民ともに様々な対策が講じられるなか、私たちは、子育てにおける不安等のマイナスをゼロにするだけでなく、どうすればもっと幸せに、笑顔になれるのかを考えたいと思っています。
そういった思いから、少子化対策に取り組まれる企業・自治体や有識者とカラダノート代表佐藤との対談を通じて、少子化を解決する上での「課題」だけでなく、インタビュイーご自身の「子育ての魅力」についてなども発信してまいります。今回は、東京都港区の区議会議員で、中学生のお子さんの母親でもある清家あい氏にインタビューしました。

子育ての「幸せ感」を感じにくい社会になっている

佐藤:私たちは子育てのDX化を推進することで妊娠・育児期の環境をより良くしようと考え、妊娠・育児支援のアプリ開発等に取り組んできました。しかし、日本の出生数は2022年には初めて80万人を下回り、少子化には歯止めがかからない状況です。
そこで、過去、出生率(合計特殊出生率)を急速に改善された港区の区議会議員として子育て支援の政策にも関わっていらっしゃる清家さんに、少子化をめぐる現状や改善策について伺いたく、対談をお願いさせていただきました。

清家議員(以下:清家):お声がけいただき、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

佐藤:約10年ほど前、港区の合計特殊出生率が1を割りましたが、2016年の出生率は最大1.45まで回復しました。はじめに、港区が出生率を改善するに至った背景を伺えたらと思いますが、いかがでしょうか?

清家:当時、ファミリー層向け高層マンションの建設が続き、一時的に保育環境が足りない状態になりました。区としては子育て政策に注力し、保育園を増やした結果、「港区は子育てしやすい」と認知いただき、さらに、港区で子どもを産む人が増えました。周りに子どもが多い環境だと、子どもを産みたいと思う人が増えたのだと思います。
ただ、現在、人口は回復傾向にあるのですが、0歳から5歳の子どもは減っていて、保育園にも空きがみられる状況です。

2021年 港区地勢 6ページより引用(資料リンク

佐藤:現在また子どもの数が低下傾向にあることについて、どのようなことが考えられるのでしょうか。

撮影:カラダノート

清家:社会全体としては、リモートワークの普及などコロナ禍によるライフスタイルの変化によって郊外へ転出された方もいると思います。コロナ禍で息苦しさを感じた子育て世帯の方々は多かったと思うので。
港区に関して言えば、子育てしやすいという認知が一巡し、周辺の区も子育て支援制度を整えたことで地域差が減り、足元の数字(出生率)が落ち着き、少し低下しているのではないか、と考えています。

佐藤:港区が先行事例として取り組まれたことが他の自治体の制度改善につながったんですね。清家さんがおっしゃるように、地域ごとの子育て支援制度の差がなくなり当たり前になれば、区への転入者数が落ち着いてしまうのはありますね。
港区というより日本全体の観点での話になりますが、昨年の報道で、OECD(経済協力開発機構)の中で男女の家事育児シェア率が一番低いのが韓国、次に日本で、出生率に関してもその2カ国が低いという結果が発表されました。
港区の先行事例や今お話を伺ったような近隣地域の制度拡充があるように、以前と比べたら日本の子育て環境も良くなった部分があると思います。しかし、出生率が改善しないことを考えると、一つの要因として社会の雰囲気が影響しているのではないかと考えています。
ワンオペという言葉が流行するように、社会全体として「子育てって大変」という印象ばかりがあり、「子どもを産みたい」と思いにくい社会を作り上げてしまっているのではないか、と思います。

清家:私もそれには同感です。私は「子どもを真ん中にして幸せを感じられる港区」を作っていきたいと考えているのですが、現時点では子育てをすることの「幸せ感」が足りないなと感じています。保育園や施設など立派なものを作っても「心がない」と意見をいただくことがありますし、私もそういった「心」の部分を大切にしたいと思っています。
日本では、家庭と仕事を両立してきた人が意思決定の場に関わること自体がまだ少ないので、「ハッピーな子育てをするために本当に必要なことは何か」「どういう支援が求められているのか」という発信や議論も足りていないように思います。そういうところも変えていく必要がありますよね。

「子育ては大変」というマイナスイメージを払拭したい

佐藤:先日、新卒採用の面接をした際に「世の中の子育てが不幸な状況になってしまっているので、それを変えたい」と発言された学生の方がいました。僕は思わず、「子育てってすごく楽しいですよ」と言ってしまったんですけど、メディアやSNSを通じて発信される情報を通じて、若い世代の方々が「子育ては不幸だ」と思ってしまっていることが考えられると思いました。「子育ては大変なことはあるけど、とても楽しいよ」と伝えていけると良いのですが……。そもそも、こんなにも子育てのマイナスイメージが先行してしまった理由について、清家さんはどうお考えですか。

撮影:カラダノート

清家:一概には言えないですが、女性の労働賃金が低いことや、子どもを大学まで行かせるとなるとすごくお金がかかるので、そういった面からマイナスイメージに繋がっていることも考えられると思いますが……御社はどうお考えですか?

佐藤:報道のあり方として困っている人の声や問題を取り上げる必要性はもちろんありますが、メディアやSNSからの発信にネガティブなものが多く、社会から応援されていないと感じてしまう環境も大きいと考えています。
直近話題になった、伊藤忠商事の出生率公表のように大手企業も社会貢献の観点で子育て環境改善に取り組みたい企業様がいらっしゃいます。我々は、自社の子育て支援アプリを活用し企業様との連携についてご相談し、大手企業の発信力をお借りして“子育て世代を応援”というムーブメントをつくりたいと考えています。

清家:それは良いですね。港区の出生率が増えた時も、メディアが子育てって楽しいというような前向きなイメージで取り組みを報じ、その情報が街中にあふれていました。

佐藤:そうですよね。そんな環境にしていきたいです。

清家:現在は高齢化が進み、今は子育て世帯の声よりも高齢者の方の声が上回るようになってしまいました。こうなると、どうしても子育て家庭の声が周囲に届きにくくなってしまいます。「子どもがいることで社会全体の未来が明るくなる」というイメージを醸成していくためにも、政策面においては子育て家庭の声を積極的に取り入れていく必要があると感じます。

佐藤:子どもは未来そのものなので、何でも多数決で決める社会になってしまうと、短期的なことばかりに目が向いてしまい、日本の未来を蔑ろにする恐れがあると感じます。

清家:そうなんです。今は18歳から選挙権がありますから、10代も含めた若い世代や子育て世代の声を政治に反映できる仕組みをできるだけ早く作っていきたいということは日々感じているところです。

細かな施策の積み重ねで待機児童ゼロを実現

佐藤:港区は2015年4月から第2子以降の保育料を無償化していますが、これは全国的に見てもかなり先駆的な取り組みだったかと思います。港区の取り組みが先行事例となり、昨年、東京都の二人目以降保育料無償化が決まりました。
港区の取り組みが良い先行事例になれたらいいと思うのですが、こうした取り組みは財政的に余裕がなければ実現は難しいのでしょうか。

撮影:カラダノート

清家:財政面の話ではないですが、コロナ禍の影響もあり、より子育てがしやすい環境を求めて軽井沢への移住者が増えていると聞いたことがあります。日本各地にそういった子育てしやすい地域が広がることは幸せなことだと思います。私が言うのもおこがましいですが、港区に子育て世帯が集中し、困っている住民がたくさんいたので子育て支援を進めてきましたが、他の地域にも良い環境がある方が日本全体で考えたら絶対幸せなんです。

佐藤:なるほど。それはそうですね。日本の少子化という観点だったら、一極集中というより分散化できるんだったらした方が良いですね。

清家:財政的な面に関して言えば、予算規模そのものよりも、いかに「人」のために使える予算を確保できるかが重要かと思います。保育園などの施設を作るだけでは子育て支援としては不十分で、そこに良い先生がいることが子どもたちの幸せにつながっていくんですよね。
私はこれまでに「認可ベビーシッターサービス事業」や「ベビーシッター型の病児病後児保育サービスの半額助成」などを提案してきたのですが、「港区は子育てを応援しています」という私たちの“心”の部分を区民の方々に伝えていくには、こういった細かな支援を積み重ねていく必要があると感じています。
そのため、現在港区が注力していることは、保育環境や教育の問題に対して保育士や教師など、“人”の部分を支援することです。
例えば、2023年度の予算案では、区立中学校の部活動の全てに部活動指導員を配置する経費を盛り込みましたし、区立小学校では高学年で教科ごとに担当の教員が教える「教科担任制」を導入する方針です。放課後オンライン英会話教室の実施も予定していますし、区立小中学校における教育を充実させるための取り組みを積極的に行っています。

佐藤:こうした取り組みは最終的には国全体で実施できると良いと思うのですが、「区」という単位だからこそ、実行に移せる部分もあるのかもしれませんね。港区の事例を見て、同様の取り組みをする自治体が増えていくことを願います。

子育てを取り巻く環境は10年前より良くなっている

佐藤:清家さんのお子さんは中学生とのことですが、お仕事と両立されながらの子育てを振り返ると、どんな感想をお持ちですか。

清家:「もう一回、子育てをやりたい!」と思いますね。一つだけ後悔しているのは、子どものアルバムを作っておけば良かったということです。子どもの写真をアルバムに整理して、時々それを親子で一緒に見ながら「こんなふうに育ってきたんだよ」という話ができると良かったのですが、そういう時間を作れなかったのはもったいないことをしたかなって思います。中学生になった今は、手がかからなくなってきて少し寂しいですね。

清家さんご家族のお写真

佐藤:清家さんにとって、お子さんはどういう存在ですか。

清家:自分より大事な存在、ですね。人生のすべてと言ってもいいかもしれないです。

佐藤:お子さんが生まれてから、子育て環境を改善するために政治家になるというのはかなり重大な意思決定だったと思うのですが、清家さんをそこまでかき立てた原動力は何だったのでしょうか。

撮影:カラダノート

清家:今から10年以上前の話になりますが、大学卒業後は7年間ほど新聞社で働いていたんです。夜回りの取材などもあるため、午前2時、3時まで仕事をするのが当たり前という環境の中、お子さんがいる女性社員はそういった働き方はできないので、当時はいわゆる「マミートラック」と言われる負担の少ない業務に配置換えになることも少なくありませんでした。しかも、そのころは保育園に入りたくてもなかなか入れない状況で、周りにいた多くの優秀な女性たちが仕事を辞めざるを得なかったんですよね。私はフリーランスになってから出産したのですが、娘が待機児童となったことで働き続けることが難しくなり、「この状況を変えるには政治に携わるしかないな」と思うようになりました。

佐藤:今から10年くらい前は、待機児童の多さが全国的に問題になっていた時期ですよね。

清家:まだ地域によって差はあるものの、保育園は以前に比べると入りやすい状況になっていますし、子育てを取り巻く環境は良い方向へ変わってきています。そういった良い変化を発信することで、子育てに明るいイメージを持てる雰囲気を作っていくことは、自治体としても力を入れたいと思います。

佐藤:大企業を中心に男性育休の取得が推進されるようになるなど、社会全体としても子育て環境を改善していこうという意識が浸透してきているように思います。未来に対して希望が持てるということは、やはり大事ですよね。

清家:そうですね。子育てが「不幸なこと」にならずにすむように、社会も少しずつ変わってきているし、自治体もさまざまな支援策を打ち出しているということを、ぜひ多くの方々に知っていただきたいですね。


今後も、カラダノートでは、様々な角度から「少子化という社会課題」と「子育ての魅力」を発信してまいります。

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