肉体と身体の違い

1ミリの瞬間移動

瞬間移動について書きましたが、おおよそ、それは理解されません。
実際に動いて見せて相手を崩しても、それが瞬間移動によるもの、とは思ってもくれません。
ただ、その思いがあればあるほど、私の技は効き続けます。
嘘も何もない、実感としてこんなに瞬間移動しているのに!と正直に伝えているだけです。しかし、伝わらない。でも、伝わらないから、技になります。

理解されない理由の一つに瞬間移動のイメージが違うから、と考えられます。
瞬間移動、と聞けば、東京とニューヨーク、そんな遠いところを移動するのにこそ使われるはずだ、と思うのでしょう。
目の前、それもたった数センチ、数ミリ程度の変化に意味はない、そう思うのも当然です。コンビニのレジで瞬間移動を使いたい人はまぁ、いません。

しかし、私が求めているのは武術の世界で有用なもの。
戦いの間合いにおいては数センチの変化を見逃せば、それはもう、死と直結します。
武術を通して探ってきたからこそ、見つかったもの。それが私が伝えている瞬間移動です。

働きを見るのか、自分を見るのか

私はずっと、身体と共に生きています。
この世に生まれて、たまたま武の道を歩くようになりました。
世の中が高度成長の波に乗り、心の勢いを増していきました。大半の人は身体を忘れ、頭が作る未来を求めて生きていくようになりました。もちろん、私もそうでした。

22歳の頃、甲野先生に出会い、それまで学んでいたものとはまるで違う世界を見せて頂きました。この出会いによって、頭寄りになっていた私の人生はまた、身体に戻ってきたといえます。

身体を観察する稽古を知って以来、いくつものたくさんの「働き」を得ました。
その一つ一つは多くの人が求める結果をくれるものです。
多くの人が科学的常識に縛られるようになり、筋トレやストレッチに集中していますが、もっと細かくこの身体を探れば、今、この瞬間からそれまでの自分とは違う自分を手に入れる事が出来るようになります。

この見つけた「働き」をビジネスとして世に出していくのならちゃんと名前を付け、ブランディングをし、手渡しをしていくのがいいかもしれません。
しかし、それならば、また「普通」に戻っていく、そう思うようになり、気がつけば、ひたすら、身体を探り、次々に出てくるありがたい働きも散らかしっぱなしにするようになってしまいました(笑)。

働きという結果は重要ですが、それ以上にその働きを生む「自分」という存在を私は気になるようです。
私とは何か、それを探り出す一番初め、それが身体であると思っていますが、そもそも身体とは何かがまず、わかっていなかった。それを今回、少し、書いておこうと思います。

イメージと身体

スポーツや武術、特に身体を大切にしてきた業界も、いつの間にか「イメージ」の大切さを説かれるようになりました。
目標無くして結果はない。まぁ、そうでしょう。
しかし、イメージは「なんとなく」の要素が大きく、同じ事をやっても、出来る人、出来ない人の差が大きすぎます。脱落者も多いです。そして、もちろん、私は脱落した方(笑)。

ただ、脱落をしたからこそ、イメージに頼らず、身体を観察するという道を得られました。
身体はとにかく、「確か」なもの。
もちろん、イメージだって確かだ、と思うかもしれません。死にゆく直前であっても失われないイメージがあればそれはもう、大したものです。ただ、そこまで実態のないイメージを守れるのか、それは問いとおきたいところです。

身体に探った感覚であれば、まぁ、結構、死ぬ直前であってもなくならないのではないか、そう考えています。
ただ、実際に死に直面したわけでもないから、それは勘違いじゃないか!と問い詰められれば、そうかも、と言ってしまうでしょうが、心の奥底には確信は残ります。
なぜなら、身体は死んでもなお、しばらくは残るものだからです。

身体に見つけた点や線、直線や曲線、らせんの感覚、上下左右へと広がる面、面が積み重なって出来る立体感、密度が増しギュッと固くなっていく感じ、すでに手指足指、髪の毛など、たくさんに分かれているという事実。
これらは死んでいようが残るもの。
そうしたものを私は持っている、それが私が人生を楽しむ事が出来るようになった大きな理由です。

肉体と身体

「からだ」を表す言葉いくつもあります。
身体、体、肉体、躰、體、ボディ、フィジカル・・・。外国語まで加わり、もう定義はごちゃごちゃです。
それらをとりあえず、自分なりの再定義をしていく。これが私の稽古です。

「からだ」を考えた時、まず手掛かりになるのは「肉体」でしょう。
骨があり、筋肉があります。体幹、肩甲骨、腕、肘、手足。それぞれに「わかれた」部位があり、その西洋的研究は進んでいます。

特に医学の発展により、「からだ」は肉体的に切り分けられ、それぞれに専門家もいます。
教育を受け育つ私たち。どうしても、先に残された研究成果をそのまま聞く、そんなスタイルが出来てしまいます。
権威を持つ骨や筋肉の専門家の言葉に縛られている、そう気づくのに随分と時間がかかりました。

西洋的専門家が言う言葉がダメなわけではないんです。
ただ、それはどうしても、科学的測定によって現れる体が強すぎるのです。
私たちは体と共に心を持っています。この心が体を揺らしているのでしょう。
どれだけ科学的に大丈夫、と保証されても痛いものは痛い、と心が萎えていきます。

肉体は測定によって随分とわかってきました。ただ、その肉体をどう受け止めているのか、それはあまり、考える事がありません。
肉体を見て、探り、その時浮かぶ様々な思いを受け止め、感じる。そうして出来上がるものが「感覚」なのではないでしょうか。

肉体がある。それは確か。しかし、そこに思いはない。これがダメ。
思いをもって、感じ、感覚として言葉に落とす。
そうして出来上がるのが身体、そんな風に考えています。

次回はこれまでに通ってきた道、稽古の仕方を思い出してもう少し、細かく書いてみたいと思います。

【不定期稽古】つくば稽古、甲野善紀名古屋稽古決まりました!

「川崎稽古」
稽古日時:2023/4/22(土)13:00-17:00(18:00 撤収、入退室自由)
会場:川崎市 宮前区「等覚院
参加費:8000円

「つくば稽古」
稽古日時:2023/6/4(日)13:00-20:00(入退室自由)
今回は初のロング稽古です。稽古の中身も楽しんでもらいたいですが、それ以上に「過ごす」という事を感じてもらえたら、と思っています。
会場:つくばカピオ リフレッシュルーム
参加費:10000円
申込、詳細はこちらのページから

「甲野善紀名古屋稽古」
稽古日時:2023/5/13(土) PM3:00~PM6:00
事前自主稽古としてPM0:00から道場を開けます。ぜひ、ご参加ください。
稽古場所:名古屋緑道院
会場住所:名古屋市緑区浦里4-202

参加費:8000円

私の稽古はどこの稽古場も、基本もなければ、覚えなくてはいけない技もありません。ペアを組んで号令に合わせて行う練習もありません。気楽に、興味本位でご参加ください。

【定期稽古】4月の予定

4/20(木) 瀬戸ヒーリング
4/21(金) 栄中日文化センター
4/21(金) 熱田稽古

個人稽古などの問い合わせ

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