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26歳、気がついたら高校の友達がみんな資産運用を始めていた。

資産運用に関する有益な情報は一つもありません
資産運用のタグつけてすみません。


緊急事態宣言中は特にやることもなく、ZOOMやらLINEやらでリモート飲み会をよくしていた。


ある日のリモート飲み会のメンバーは高校の部活の同級生二人だった。
高校時代、多くの時間を注いだ部活で一緒に活動していたので、必然仲も良くなり卒業後も定期的に会っている友人たちだ。


現在、僕はエンタメ系の会社でサラリーマン、ナカムラ(仮名)はバカデカ鉄道会社のサラリーマン、イトウ(仮名)は地元銀行で銀行員をやっている。



まずは近況報告をしあう。
イトウは数ヶ月前から外回りの仕事になり、移動中はよくラジオを聴いているという。


「いいねえ!!」
ラジオが大好きな僕は嬉々としておすすめラジオ情報を話し出した
オードリーのオールナイトニッポン、バナナマンのバナナムーンGOLDは鉄板。ハライチのターン、アルピーDCGは1時間番組で聴きやすい。霜降り明星のオールナイトニッポン0はくりぃむしちゅーのオールナイト好きならたぶん好き、など早口でまくし立てる



「まあ人から勧められて義務感で聴くとあんまり楽しめなかったりするし、聴くものないなと思った時にでも聴いてみてよ」
スマートな気遣いを残し、僕はトイレで中座した。


パソコンの前に戻る途中「人気ラジオ番組完全ガイド ラジオ番組最強ランキング」を見つけ本棚から引き抜く。
パラパラめくり「ラランドと佐久間さんのこと勧めるの忘れてたわあ」などと思いながら席に着くと、会話の空気が変わっていることに気づいた



「インデックスファンドは…」「あの制度の税制優遇って…」


???


「個別株の…」「NISAは結局…」


あ、こいつら資産運用の話してる



自慢ではないが僕は資産運用を全くしていない。
銀行口座は一つしか持っていないし、計画的に貯金もしていない。
元々金遣いが荒い方ではないので、毎月余ったお金が口座で少しづつ増えているだけだ。


二人のあまりに“大人”な会話に気圧されつつ、動揺が顔に出ないように気を付ける。
人気ラジオ番組完全ガイド ラジオ番組最強ランキング」は画面の外に押しやった。


そこから先のことはよく覚えていない。
知らない単語、知らない人名が続々と飛び交った。


会話に出てくる知らない言葉の含有量が60%を超えたところで、僕は「あえて多くは語らないがちゃんと全部わかってるやつ」から「この分野は素人ながら質問のセンスから知性は感じられるやつ」へと狙うポジションを変更し、なんとかその場を乗り切ることに集中した。


終話。


画面の外で握りしめていた「人気ラジオ番組完全ガイド ラジオ番組最強ランキング」は冷や汗で少しふやけている。


圧倒的な置いてけぼり感だけが残った。

小2の時、友達の中で自分だけが母親のことを「ママ」と呼んでいることに気がついた時のあの感じ。大学3年の時、OB訪問あるあるでみんなが笑っているのに何一つわからなかったときのあの感じ。


「あれ?おれだけ遅れてるのか?」


資産運用している人がいるのは知っていたし、必要なこともわかっていた。


ただそれはtwitterのbioに「/」で区切った大量の肩書を載せているような人たちのものだと思っていたし(すみません)、オンラインサロンの主を神として崇める人たちがやるものだと思っていた(ほんとにすみません)。


しかしその日見知らぬカタカナを駆使して資産運用の話を繰り広げていたのは、「トリコ」全巻を二回売って、三回買い集めたあいつ(ナカムラ)なのだ。「数ⅡBの点数で勝負しようぜ〜」と持ちかけてきたくせに、28点を取って補修を受けていたあいつ(イトウ)なのだ。


これはちょっとほんとにやらなくちゃいけないのかもしれない…。


Amazonのトップページを開き、その日教えてもらった本の名前をいくつか入力してみる。
YouTubeに移動し、おすすめされた投資系YouTuberの名前を入力してみる。
30分ほど経って、僕はほとんど泣きそうな気分になっていた。


資産運用に関する前提知識がなさすぎて、あまり話が入ってこないというのももちろんある。
ただそれ以上に、そもそも未来の自分をリアルに想像することに多大なストレスを感じてしまっていた。


自分の今の給料で、子供がいたらと考えると電卓叩く前に白旗を振りたくなってくる。
資産運用入門サイトの「資産運用しなかった場合」と「資産運用した場合」の人生は確かに資産は違ったが、ほぼ同じくらいつまらなそうだった。


どうやら僕は、20代も後半に差し掛かる今になってもまだ「今の自分では想像もつかないこと」が起きてほしいと期待している


僕がこんなことを考えているうちに高校のときふざけあっていた同級生たちは地に足をつけて、自分の可能性を押し広げて行っていたのだ。


はー、やになっちゃうわ。
とりあえず今日は自分を奮い立たせてなんとかポチったこの本を読んでみることからはじめよう。



ちなみにこのnoteを一緒にやっている二人に資産運用しているか尋ねてみたところ、二人とも全くしていないとのことだった。
このコミュニティは危険なほどに居心地がいい。
(資産運用始める時は教えてね!)

サイトウでした。

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いえもん
この世の引越しの理由の中で一番素敵な理由じゃないですか!
新居も行ってみたいし、とりあえず飲み会したいですね。

@きっちゃん
まじで朝井リョウのエッセイは面白いだけなので、ぜひ読んでみて!

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