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自己肯定感が低いことのメリット

世間では自己肯定感を高くすべしという言説がまかり通っているし、

日常の心の安定を考えたら私もそれで正しいと思う。

しかし私は最近「自己肯定感が低い人間だからこその強さ」みたいなものを考えるようになった。

比較的デカいことを成し遂げようと思うのなら、自己肯定感はある程度低い方が有利かもしれない。だが純粋にただ幸福に暮らしたいだけなのであれば、自己肯定感は高い方が良い。という感じに考えている。

自己肯定感が高い人間の弱点

というのは、自己肯定感が非常に高い人を観察していると、そういう人たちは「自分の心を折る出来事」「自分を否定せざるを得ない出来事」から目を背けるのが非常にうまいのである。こうした「不都合を無視する力」は自己肯定感を高く保つ上で必須の能力であるから当然と言えば当然なのだが、これまで「自己肯定感の高い人間」を心底羨ましく思い手本のように感じていた私からすると、自己肯定感の高さゆえの弱点、みたいなものを見つけただけでなんだか不思議な気持ちになるのだった。

自己肯定感が高い人間は不都合を無視するのがうまい。ゆえに、不都合を乗り越える力を身につけることがない。そんなものはつけなくて済むからだ。だって問題なんて何も起こっていないからだ(本人の中では)。重ねていうけれども、本人の幸福を考えればこれは全く責められたことではないし、むしろより賢い生き方であると思う。

自己肯定感の高い人間は自分の能力の届く範囲で生きていくし、それで満足する力も高い。それを弱いだの程度が低いだの考える人間の方が遥かに身の程知らずのバカだと思う。人間は結局、自分の能力の届く範囲でしか生きられないし、それで満足する他に、幸福になる道筋などありはしないのだから。

自己肯定感が低い人間の強み

しかしそういう身の程知らずでバカな考え方を持ち続け、困難を乗り越えていく根性を持つのが自己肯定感の低い人たちである。自己肯定感が低い勢は、困難を直視することができる。自分の人生に失敗があることを当然のこととして受け入れているから。

これは失敗だ、これはまずい事態だ、自分はダメなやつだ、またやらかしてしまった。と、素直に認めることができる。そして胆力と行動力、知性でもって、それを乗り越えることがある。もちろんこれは「ことがある」だけで、いつもではないし、自己肯定感の低い人間が誰しもこういう力を持っているわけでもない。

つまり自己肯定感の高い人間は逆境を無視するために逆境に強いが、逆境を乗り越えることがない。自己肯定感の低い人間は逆境を直視するため精神的ダメージを受けるが、逆境を乗り越える可能性を持っている。

この両者を見比べたときに、どちらがよりデカいことを成し遂げられるかというと、本人の才能など他の要素にも左右されるが、案外、後者なのではないかと思う。

実際大きな結果を残した著名人が、必ずしも自己肯定感を高く保っているわけではないのは皆実感していると思う。誰がどう見ても成功し日本中の愛を獲得しているお笑い芸人が強烈なルサンチマンを抱えてたりするのもこういう視点から見れば納得がいく。

逆に自己肯定感が高い成功者というのは、逆境を無視しても結果を出せるくらいに運に恵まれているか、または逆境を経験しないほど才能に恵まれているということなのかもしれない。それもまたとんでもない話だな。

ただし強み=幸福ではない

ここまで書いてきたのは「デカいことに挑戦した場合に結果を出せるかどうか」であって、本人の幸福感とはなんの関係もない話だ。自分はデカいことで結果を出したわけではないのであくまで想像だけども、自己肯定感が低い人間は、その馬力によってデカいことを成し遂げたとしても、自己肯定感が上がるわけでもなく、満足するわけでもなく、ずっと惨めな気持ちを抱いているのだと思う。

また、自己肯定感が低い方が問題を直視できるとは言ったが問題を乗り越えられない場合も多いわけで、その場合はただただ心に傷を負い、自分を責めることにになる。こうした挫折体験の積み重ねにより無限の自己憐憫に溺れていくのも、自己肯定感が低い人間ならではの不幸だと思う。これはたちの悪い不幸だ。

そういうわけで結局「自己肯定感が高いに越したことはない」という結論は揺るがない。揺るがないのだけど、外側から見た場合の印象として、「自己肯定感が高い人間よりも、低い人間の方が成功しやすい・結果を出しやすい」ということはあるのではないかと思う。

もちろん自己肯定感の高い低いというのもグラデーションで、白黒はっきりさせられるものではないと思う。また、自己肯定感を意識して高めている人間と元から高い人間の差異もあるだろうし、自己肯定感の高い人間がこのような自らの弱点を意識し、あえて自己肯定感を低めた考え方をしている場合もあるだろうと思う。

要はバランス、というようなつまんない結論になってしまうのだが、とにかくここで言いたかったのは、「自己肯定感の低さも、強みになりうるのだ」ということだ。

そしてこのことによって、自己肯定感の低い人間が「自己肯定感が低いのもある意味で悪くない」と考え、自己肯定感を高めることの助けにもなるのではと思ったりした。

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