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株式時価総額について

バブルの頃、株式時価総額ランキングの上位を日本企業が占めていたが、今ではベスト10に1社たりとも日本企業は入っていない。まさに隔世の感がある。

GAFAMの5社の時価総額は、21年頃のピークで約10兆ドル(1,300兆円)に達して、東証一部全体の時価総額を抜いたこともあった。最近はハイテク銘柄が揃って調子を落としているものの、依然として大きな存在感を示している。

企業にとって時価総額がすべてではないが、時価総額の大きな企業は総じて企業価値も大きくなる。

算数的に整理すると、
・企業価値=時価総額+有利子負債=事業価値+非事業価値
といった感じになる。

単純な話として、公開企業であれば、株式を全部買い占めてしまえば、会社を自分のモノにすることができる。会社が保有する現預金、商品の販売権やチャネル、得意先、技術や特許、営業ノウハウ、土地・建物等々の有形無形の資産、それと社員すべてである。欲しいモノだけ「良いところ取り」して、不必要なモノは廃棄しようが、売り飛ばそうが理屈の上では自由である。

そういう意味では、株式時価総額が低いということは、会社にとってリスクでしかない。昔は日本企業が米国の名門企業を買収して物議を醸したこともあったが、今ならば、米国の大手企業、たとえばGAFAMの1社とかが、もしその気になれば、日本の名門大企業であっても衝動買いできそうなレベルである。

たとえば、メガバンクの一角、みずほフィナンシャルグループは本日(23年2月21日)の株価で5兆4千億円である。ゆうちょ銀行は4兆6千億円なので、もし10兆円くらい予算があれば、これら2つまとめてお買い上げ可能となる。現金が10兆円なくても株式交換をするというやり方もある。

日本の総合商社、三菱商事、伊藤忠商事、三井物産なども、いずれも7兆円くらいあればおつりが来そうである。

ことほどさように、時価総額が大きいということは、資本主義の世界では、まさに「正義」なのである。

総合商社はともかくとして、日本の金融機関などは世界的に見れば既に「2軍」扱いだから、金融技術とかノウハウに関しては見るべきものはない。それでも膨大な分量の顧客を丸ごと手に入れることができれば、やり方次第でいくらでもビジネスチャンスがありそうである。何しろ、日本の家計部門が保有する金融資産残高は2,000兆円以上であるのだ。総合商社を買収すれば、川上から川下までの商流を一気に取り込むことができる。取引先データも抜き放題である。衰えたといえど、日本は世界第3位の経済大国なのである。

さらに付け加えるならば、これら伝統的な大企業には、まあまあ優秀な社員がたくさんいる。出身大学の偏差値が無駄に高いだけの優秀ならざる社員も一定数はいるが、それでも日本社会全体の中で最上位層に位置づけられそうな人材が必ず含まれている。しかも世界的に見れば給与水準は破格に安いとなれば、それだけでもお買い得である。使えない人材はさっさとリストラして、使いものになりそうな人材だけ残せばよいだけの話である。

相場の世界では「裁定取引」(アービトラージ)というのがある。割安な投資対象を買い、割高な投資対象を売るポジションを取ることである。

以上のように、日本企業というのは、時価総額的に見ても割安だと思うし、お買い得だと思うのだが、そういうような動きが起きないのはどうしたものか。たとえるならば、日本企業全体で「株価収益率(PBR)」が1倍未満の状態であると思うのだが。

もしかしたら、日本という国自体が、我々日本人が考えている以上に、世界的に見ても「オワコン」であり、あまりにカントリーリスクが大きすぎるために、日本企業に対して投資しようと思うような大胆な投資家はいないということなのだろうか。

謎である。

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