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「デスバレー」について

スタートアップ企業の資金調達についての記事は、前にも何度か書いたことがある。

日本ではVCマーケットの規模が米国に比べて小さく、IPO準備段階での大規模な資金調達には限界がある。スタートアップ企業は銀行融資を得られないか、得られても少額で、資金難から倒産の危機に瀕する「デスバレー」(死の谷)を乗り越えづらい。

そのため、グロース市場で「小さく」IPOを実現するといった選択肢を取ることになってしまうのであるが、「小さく」IPOをしてしまうと、その後の成長戦略も「小さく」なってしまうことが避けられなくなる。

そうしたスタートアップ企業の株式以外、つまり間接金融によるファイナンスをフィンテック(金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動きの意味)で結びつける動きが見られることは、スタートアップ企業に新たな選択肢を提供する。

「Yoii」(東京・渋谷)、「Fivot」(東京・港)等のフィンテック企業による「レベニュー・ベースド・ファイナンス」は、将来の売上高を予測、売上高の一部を現金化する調達手法であるという。将来性はあっても足元のキャッシュが乏しい企業にとってはメリットが大きい。またエクィティー・ファイナンスと異なり、創業者等の既存株主の保有株式の希薄化が起きない点も見逃せない。

「Siiibo(シーボ)証券」(東京・中央)は、私募債を個人にオンラインで販売しており、未上場企業の私募債取り扱い実績も既にあるとのこと。これは一種のクラウドファンディングみたいなものであろう。無担保での資金調達だから、おそらく金利は相応に高くなるのだろうが、ハイリスク・ハイリターンの資金運用を許容できる個人投資家の小口資金を集めることができるのであれば興味深い。

スタートアップ企業で資金の調達手法が多様化し、株式調達への依存度を減らすことができるのであれば、「ダウンラウンドIPO」(株式評価を下げてIPOする)を選択するしかなかった企業に対して、新たな選択肢と成長のための時間を提供することができる。

本当は既存の銀行が、もっとベンチャー融資に積極的になれば良いのであるが、保守的な審査スタンスを崩さない以上、あまり多くは期待できない。

スタートアップ企業の「デスバレー」に橋渡しをするのもスタートアップ企業ということになるのかもしれない。


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