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「チャリカスママ」騒動のその後について

前に、いわゆる「チャリカスママ」騒動に対する世間の過剰とも思われる反応について記事を書いたところ、自分でも信じられないくらいに多くの人に読まれることとなった。

この「チャリカスママ」が、あまり公共マナーの良くない、民度低めの女性であることは否めないものの、彼女に対する世間のバッシングは、明らかにやりすぎであり、度を越している。

ネットの世界でありがちなことだが、当事者でもない人間が、過剰な正義感でもって、見ず知らずの人間を叩くのは、はっきり言えば、正しい正義感の行使ではなくて、単なる「娯楽」「ストレス解消」に過ぎない。匿名で自分に危害が及ぶおそれがないから、安心して他人を攻撃しているだけである。

この「チャリカスママ」(この名称自体、悪意あるネット民が勝手に名付けただけなのだが)に、いくら非があったとしても、彼女の名前や住所や家族構成まで特定して、それをネット上で晒したり、自宅に凸することに、何か正当な意義があるとは思えない。むしろ、こうした行為そのものが、不法行為であるし、訴えられる可能性だってある。

この騒動から学ぶべき教訓は、道路交通法上、自転車は軽車両、つまりクルマの一種であるにもかかわらず、交通ルールを勉強しなくても誰でも公道を走れてしまうこと、車道、自転車専用道路、歩道がちゃんと分離されていないこと等、社会として改善に向けて取り組むべき課題がたくさんあるということであって、特定の個人を攻撃すれば済むことではない。

昨日も、ウチの近所の歩道を、自転車で爆走する男性とすれ違った。すれ違った時、歩行する僕と自転車の男性との距離はほんの20センチほどであった。走行する自転車と歩行者が接触したり、歩行者のカバン等を自転車が引っかけた場合、双方が転倒する危険性がある。スピードを出していれば余計に危険であろう。歩行者が高齢者の場合、大怪我もしくは死亡する可能性もある。そうした最悪なリスクまで想定していたら、歩道を自転車で爆走する気にはなれないはずである。何かあっても、すぐに停車できるくらいのスピードが限界である。

かと思えば、警察庁は30日、一般道路のうち速度規制がかかっておらず中央線などがない区間について、車の最高速度(法定速度)を時速30キロと定める方針を決めたのだという。<一般道の法定速度は60キロだけで、狭い道路でも速度規制がなければ60キロまでの走行が可能なため、30キロを導入することで生活道路での歩行者らの安全確保を狙う。一般道の法定速度の新設は初めて。>とのことであるが、住宅地の生活道路で、今まで時速60キロが許されていたこと自体、驚くべきことである。時速30キロでもホントに大丈夫かなと思ってしまうようなエリアは、ウチの近隣にもいくらでもある。

要するに、日本の道路交通法というもの自体、「歩行者目線」になっておらず、自動車の円滑な通行を最優先する発想で組み立てられているような気がしてならない。で、自転車というものは、軽車両と言いつつ、いわば「野放し」な状態に置かれていたわけで、行政の目配りが、そこまで及んではいなかったということである。ホントは、自転車だって、原付きバイク同様に公道を走る以上は免許制でも構わないはずである。

そういう意味では、「チャリカスママ」もまた、日本の道路交通法の不備の犠牲者と言っても差し支えない。こういう無知で迷惑な女性を生み出さないためにも、免許制にしないまでも、交通ルール教育を徹底する等の施策を今すぐにでも講じるべきなのであろう。

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