「チャリカスママ」騒動について
しばらく前に、「チャリカスママ」に関する騒動があった。
この事件では、ドライブレコーダー動画がSNSに投稿されたのであるが、ママチャリに乗った女性が道路の右側を走行しており、自動車に向かって威嚇すると思われる様子が記録されていた。動画で晒されている態度が、あまりにふてぶてしいことから、「チャリカスママ」と呼ばれているらしい。
もちろん、自転車の右側通行は道路交通法で禁止されている。自転車の右側通行や逆走は交通事故を引き起こす重大なリスクを含んでおり、法律では左側通行が義務付けられている。
自転車とはいえ、道路交通法上は、クルマ(軽車両)である以上、交通法規を遵守するのは当然である。
もっとも、明らかにママチャリ女性に非がありそうな事件とはいえ、ドラレコの映像をネットで晒したり、それに基づいてネット民が女性の名前や住所を特定したりと、ちょっとやり過ぎな感は否めない。
法的にも、名誉棄損等で女性側から訴えられるリスクもあると思われるし、いくら頭に来たとしても、自警団的なネット上でのリンチ行為は慎むべきだろう。
とはいえ、この事件のニュースに接して改めて思うことだが、世の中の自転車に乗っている人々のうち、道路交通法等の交通ルールをちゃんと教育されていない人たちは、相当数存在するのは事実であり、彼ら彼女らは、自分たちがいかに危険なことをしているのかも、それが原因で重大な事故が起きる可能性があるということも、ちゃんと理解していないのではないだろうか。
もちろん、自動車教習所等に通って、普通自動車免許以上の免許を取得している人たちは、基本的な交通法規くらいは教育されているだろう。僕なんかも、もう何年もクルマの運転はしていないが、道路を走る時は、たとえ自転車であろうと、左側を走行するものだというくらいはわかるし、無意識にせよ、最低限のルールは守っていると思う。
ところが、世の中には運転免許を持っていない人というのも一定数は存在する。ちょっと不確かな情報になるが、成人のざっと2割前後くらいは、運転免許を保有していない / 保有する予定がない人たちであるという。
銀行員をしていた頃、各支店では、外勤専門のパート社員を雇っていた。主として女性であるが、彼女らの主たる業務は、集金であったり、個人顧客向けの営業活動であった。顧客のところを訪問しないと仕事にならず、主たる交通手段は都市部の場合は自転車であった。郊外だと、原付バイクとか、軽自動車を使用する場合もあったらしい。
彼女らが日々、自転車で外訪活動を行なう以上、一定の確率で交通事故が発生する。もちろん、大部分は軽微なものであるが、自動車と接触したり、歩行者と追突したりといった、物損、人身事故もたまに発生した。
僕が記憶しているのは、その際の事故者のほぼ全員が、運転免許を保有しない人たちであったことである。で、彼女らの事故の多くが、道路の右側を走行したり、信号を無視したり、一時停止をしなかったり、二段階右折を守らなかったりといった、基本的な交通ルールを守らなかったことが原因と思われるようなものであった。
運転免許を保有しない人たちの多くは、交通法規に関して「無知」である。そういう人たちは、自分の方に原因があったとしても、そのことを理解できておらず、相手方(クルマであったり歩行者とか)が悪いかのような認識をしていることが多かった。
今回の事件の「チャリカスママ」がどんな人かは知らない。運転免許を持っているかどうかも不明である。
だが、彼女の動画での態度から推察するに、交通法規をあまり知らない、無知な人だったのではないだろうか。知らないというのは、怖いもの知らずでもある。自分に非があるとは思っていないからこそ、ここまで激しい怒り方をしていたに違いないからである。もし仮に、自分が悪いのを十分に認識した上で、ここまで「逆ギレ」したのだとすれば、単なるアホである。
そう考えると、自転車を乗るのにも、何らかの免許制度を導入して、交通法規に関する一定の知識がなければ、公道で自転車を運転させないといったやり方に制度を改めるというのは有効かもしれない。
自転車だって、結構なスピードが出る。昨今の、電動アシスト付き自転車なんか、もっとスピードが出る。事故が起きれば、死傷者が出る。原付バイクには免許が必要なのだから、自転車だけ不要というのは本来はオカシイ。
今さら、免許を導入すると、社会的に混乱してしまうということならば、定期的に講習を受けて、修了試験を受けさせるというのはどうであろうか。別にわざわざ、警察署とか交通試験場に行かなくても、警察のホームページから所定の講習のコンテンツを視聴した後で、e-ラーニングで簡単な確認テストを受験させてて、一定以上の点数を取得したら、「修了証」が発行されるといった方式でも良い。公道で自転車に乗る際には、この「修了証」をスマホのアプリにダウンロード(「接種証明」のイメージ)して携行するようにすればよい。講習未受講なのに公道で自転車を運転したら、罰金罰則の対象にとする。
我ながら、すごく秀逸なアイデアではないかと思うのだが、いかがであろうか。
いずれにせよ、今回の事件は、せっかく大きな話題にもなったわけであるし、単なる特定個人に対する公開処刑のようなことだけで終わらせるのは、もったいないと思う。これを機会に、どうすれば自転車の交通安全が実現できるのか知恵を出し合いつつ、皆んなで考えるべきであろう。
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