見出し画像

「私の履歴書」について

日経新聞朝刊の文化面には、「私の履歴書」という連載記事がある。1956年3月からスタートしたのだそうで、毎月1ヶ月間(1日から末日)にわたって1人の人物が連載する体裁を取っている。基本的に各界の著名人というか、功成り名を遂げたような大物の半生記というスタイルである。

誰かも書いていたことであるが、読んでいて面白いのはアーティスト系、つまり画家、作家、音楽家、デザイナー、漫画家、役者や舞台人、それに学者・研究者といった人たち、およびスポーツ関係者である。こういう人たちは、自分の才能と努力だけで独自の道を切り拓いてきた点で共通するものがあるが、それぞれオンリーワンというか、多士済々な人たちなので、いずれも新鮮である。また一種の「変人」が多いので、読み物として退屈しない。

それに比べると面白みが欠けるのは財界人であるが、それでも創業経営者に関しては、アーティスト枠に入れても構わないくらいに個性的な人物が多い。どんな業種業界であっても、「ゼロイチ」で何もない所から起業する人というのは、凡庸ではつとまらないからである。こちらも一種の「変人」というか、下手をすると社会的に不適合なのではないかと思われる人も大勢含まれるので、我々一般人に勇気を与えてくれる。

創業者以外の財界人、つまりサラリーマン経営者は総じて面白くない。同様に官僚出身者も面白くない。要約すれば、「一生懸命に宮仕えに邁進しました」という優等生の自慢話であり、どれも似たような展開になってしまい、読んでいても途中で退屈してしまうのだ。

したがって、僕の場合、「私の履歴書」の月末の最終回の末尾に翌月から登場する人物の名前が記載されているのを見て、前記のアーティスト枠(創業経営者を含む)の人物ならば「当たり」、サラリーマン経営者や官僚出身者であれば「外れ」と判断して、翌月以降、真面目に読むかどうかを決めることにしている。

22年12月は、世界的指揮者であるリッカルド・ムーティが連載を開始している。昔、フィラデルフィア管弦楽団を率いて来日した際のコンサートを聴きに行ったことがあるが、当時はたしかまだ40代、若武者のような印象であったが、齢81歳とのこと。既に同世代の大物指揮者の多くは鬼籍に入っている。ムーティ同様に今も現役で活躍しているのは、ズービン・メータとかダニエル・バレンボイムくらいしか思い浮かばぬ。小澤征爾もいるにはいるが、あれはもはや現役と言って良いのかどうかわからない。

いずれにせよ、上記の判断基準によれば、今月に関しては、「当たり」の月ということになる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?