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地方百貨店の衰退について

地方百貨店の衰退が著しい。

地方百貨店の多くは、その前身が地元の老舗呉服屋だったりする。呉服屋時代から起算したら、創業200年を超えるようなところもある。したがって、地元でのブランド力や信用というのは、なかなか侮れないものがある。

が、時代の変遷の波に揉まれ、廃業するようなところもある。地方の人口減少の影響をモロに受けているのだ。24年1月に、島根県の一畑百貨店が閉店して、これで百貨店が1つもない「デパートゼロ県」は、山形、徳島に続いて3例目となる見通しだそうだが、そんなもので終わるはずがない。閉店予備軍はもっとたくさんある。百貨店の商圏が確保できるのは、せいぜい政令指定都市くらいであろうし、さらに言えば、すべての政令指定都市というわけでもない。大手系列に属さない地元の独立系百貨店はいずれすべて廃業する可能性は十分ある。

福岡市の天神地区に、「岩田屋」という老舗の百貨店がある。そのルーツは、1754年(宝暦4年)創業の岩田屋呉服店にまで遡る。実に250年以上も前である。かつては、福岡で百貨店と言えば、「岩田屋」のことであった。東宝の特撮映画で、怪獣ラドンが降り立ったのも、「岩田屋」本館の屋上であり、サザエさんがお見合いをしたのも、「岩田屋」の地下食堂であった。それが今では、三越伊勢丹グループの傘下に入っている。地元では泣く子も黙るような老舗「岩田屋」でさえ、スタンドアローンの独立系として経営を維持することは不可能だったという話である。

この「岩田屋」の創業当時から、経営不振に陥り、「伊勢丹」に救済されるまでの歴史をわかりやすく解説したYouTube動画があったので、ご紹介したい。

「福岡歴史発見!Fukuoka Memories」というチャンネルの中の動画で、「岩田屋」だけをネタに、4回にわたって取り上げている。製作者の「岩田屋」に対する思い入れが感じられる。というか、福岡市民にとっては、それくらいに大きな存在だということであろう。

今も「岩田屋」の看板こそ残ってはいるが、中身は「三越伊勢丹」である。だが、「そごう」「西武」とは違うところは、経営破綻する前に、私的整理を行ない、創業者一族が経営から退くことを条件に、「伊勢丹」の支援を仰ぎ、「岩田屋」のブランドだけは守り抜いた点である。

百貨店は、一般消費者相手の商売であり、ブランドイメージはことのほか重要である。経営破綻した百貨店の商品券やご進物を貰って、喜ぶ人はおそらくいないだろう。

そういう意味で、西武・そごうは、もう百貨店としては詰んでいるということになる。買収した外資も、百貨店経営にはおそらく興味なんかないだろう。駅前の一等地にある不動産を再開発でどう付加価値を創出して大儲けするかにのみ興味があるのだろうと思う。


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