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日経新聞について

僕は、大学生の頃から、銀行員時代を含めて、かれこれ40年くらいは日本経済新聞を購読している。累計の購読料たるや、相当な金額になるであろう。感謝状くらいもらってもバチは当たらないレベルである。

この記事を書いていても、日経新聞の記事を引用することが多い。それは有料電子版も含めて購読しているので、単にネットで検索するのが便利だからというだけの理由である。

正直なところ、日経新聞というのは、「大企業の御用新聞」みたいな性格があるので、いろいろな意味で限界があると思いながら読んだ方が良い。

まずは、伝統的な大企業に対しては、どうしても姿勢が甘くなる。不正会計だったり不祥事とか、世間を騒がすような大きな問題を起こした企業があったとしても、他紙と比べるとややツッコミが浅い。身内同士というか仲間意識があるからだろう。それにあまり手厳しいことを書きすぎて相手企業から恨まれたりすると、今後の取材活動や広告収入にも影響があるから、どうしても手加減してしまう。

また次に、広く浅く、いろいろな企業のことを記事にするためか、1つ1つの記事の踏み込みが浅く、深堀りはしない。詳しい情報を知りたければ、「日経産業新聞」「日経MJ」等の専門紙や、「日経ビジネス」等の雑誌類を購入して読めと言いたげな宣伝半分みたいな記事も少なくない。

そういう限界があるのをわかった上で、長年にわたり購読しているのには、いろいろ理由がある。

1つは、一定レベル以上のサラリーマンならば、ほぼ全員が日経新聞くらいは読んでいるからである。したがって、銀行員の場合、今朝の日経の朝刊に何が書いてあったのか、取引先に関係ある記事があったのかなかったのか、それくらいはチェックしておかないと、取引先の人たちと会っても日常会話が成立しない。かつて渡辺淳一がエッチな小説を連載していた頃は、その話題で取引先の社長と盛り上がったりしたこともある。小学生が、テレビで人気アニメを観ておかないと、翌日、小学校で友だちの話題についていけないのと同じことである。

2つめは、ビジネスの世界での一般的なモノの見方の「標準解」が示されているからである。この場合、本当に正しいかどうかは別である。とりあえず、「こういう見方をする人が世間では多いんだろうなあ」ということは、日経を読んでいるとよくわかる。最近だと、「円安は悪」のような記事を日経は毎日のように書いている。円安が本当のところ良いのか悪いのかはまだ判断がつかないが、こういう見解の人がビジネスの世界で多数派を占めていそうなことは見当がつく。

3つめは、ビジネスとか経済に関する記事に関しては、他の一般紙と比べたら、まだマトモだということである。朝日新聞とか読売新聞の経済部の記者にも、業界歴が長くて、よく勉強している人もいるのだろうが、転勤とか配置転換でたまたま経済部に配属されただけの人も少なくない。基本的にあまりビジネスの世界には興味もなく、大して勉強もしていない、それでいてエリート意識だけは旺盛な記者というのは手に負えない。昔、業績の悪い取引先企業が証券取引所の記者クラブで決算発表をするのに立ち会ったことがあるが、最前列ど真ん中でふんぞり返っていたのはリベラルを標榜する某紙の若造記者であった。彼はたぶん会計の仕組みもよく理解していないのだろうが、減価償却とか減損に伴う引当金がキャッシュアウトする費用なのかどうかもわからずに頓珍漢な質問ばかり連発して、質疑応答の場を混乱に陥れていた。翌日の記事も何やらポイントがズレたような内容であった。さすがに日経新聞にはこういうレベルの記者はいない。

いずれにせよ、新聞も雑誌も、もちろんネット記事も、あまり信用しない方が良い。「ポジショントーク」という言葉がある。人間は、それぞれの立場によって、自分に有利になるような、あるいは自分が不利にならないような情報を流すものである。金融の世界だと、自分のポジションに有利な方向へ相場が動くような情報を意図的に流したりする。

日経新聞は、「大企業の御用新聞」だし、官民協調な日本においては、政府・日銀とも結託しているから、いわば「体制側のポジショントーク」だと思いながら、眉に唾をつけつつ心して読む必要がある。

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