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「浦和レッズ」について③

レッズに関する記事は①②で終わりにするつもりであったが、少し書き足りないと思うことがあったので補足する。レッズの熱烈なファン・サポに対してディスるような内容になるので、たぶん反発を食らうかもしれない。

政治思想、宗教等にも通じることであるが、何ものかを熱烈に崇拝する人たちというものは、自分自身がいかに正統的な立場にあるかについて競いたがる傾向がある。

政治思想や宗教であれば、それが原因で論争が起きたり、権力者による粛清が行われたりするのだが、レッズ・サポも似たようなところがある。

まずは他のクラブ・チームのファン・サポに対するリスペクトを欠いている人が少なくない。野球だろうがサッカーだろうが、熱烈なファンというものは存在するが、レッズ・サポのそれはしばしば度を越してしまうようだ。

もちろん健全な競争心や対抗意識は必要だが、相手がいなければ試合はできない。ベースには相互の信頼関係や相手に対するリスペクトが不可欠であると思うのだが、見ているとどうも度量の小さいファン・サポが多いような感じがするし、そんなことだから、いろいろな場所で事件やもめ事が起きるのである。国内最大の観客動員力を誇るビッグクラブのファン・サポなのである。もっとオトナになってもらいたい。地方の中小クラブのファン・サポを温かく応援するくらいであってほしい。

次に同じレッズ・サポ同士においても、自分がいかに「正しい」サポかということであるかを競い、マウントの取り合いや醜い争いを繰り広げたがる人が残念ながら散見される。

この場合の「正しい」とは、サポ歴であったり、レッズに関する知識量、スタジアムでの参戦歴、歴代のユニフォームや関連グッズの保有量、選手個人との人間関係の親密さ等、多岐にわたる。総じて、自分がどれだけの時間や労力やおカネをレッズのために投じているかをアピールしたがる人がやたら多い。参戦のために仕事を辞めた回数を自慢げに語る人に出会ったこともあったし、創刊以来のマッチデープログラムが実家に保管されていることを得々と語る人もいた。

こういう人たちは、「正しい」に関して自分よりも劣る相手を無条件で見下す傾向がある。ある意味で、他クラブのファン・サポに対してよりも容赦がない。スタジアムでの応援に関しても、スタンドで座って穏やかに観戦しているだけで「地蔵」などと侮蔑されたりする。たかがサッカーである。試合の楽しみ方は個々人それぞれの問題であるにもかかわらずである。宗教における異端者に対する態度にどこか似ている。14年に「JAPANESE ONLY」という横断幕をホーム側ゴール裏スタンドのゲート入口に掲げる事件が起きたが、あれなども明らかに同じレッズ・サポに対する不適切な姿勢が招いたことである。

サッカーの母国であるイングランドでも、フーリガンと呼ばれるようなルールを逸脱したファン・サポによる暴力行為は昔からあったし、大勢が死傷するような大事故も何度か起きている。プレミアリーグが発足した狙いも、そうした過去の反省に立ち、スタジアムを女性や子どもが安心して観戦できるように整備し、サッカーを健全なエンターテイメントとして発展させることにあったと聞いたことがある。

浦和レッズというビッグクラブが、これだけの観客動員力を誇り、「埼玉スタジアム」という立派なサッカー専用スタジアムをホームにしながら、イマイチ垢抜けず、全国区銘柄にもなりきれないことの理由の1つとして、皮肉な話ではあるが、熱烈過ぎるファン・サポの存在があるような気がしてならない。

もちろん、経営陣の問題とか、選手の問題、戦績の問題等、他にもいろいろと問題点はあるのだろうが、「レッズ・サポ = 怖い」というネガティブなイメージが世間に広がっていることの重大性に関しては、ファン・サポの皆さんは自身の問題として謙虚に受けとめるべきではないかと思う。

そうは言っても、たぶん大部分のファン・サポは常識的で健全な人たちであると思う。家族ぐるみでお爺ちゃん・お婆ちゃんから孫まで三世代揃って観戦に行く光景も目にする。問題なのは、ごくごく一部の困った人たちである。厄介なのは、彼らは自分たちの正当性を信じて疑わず、反省もしない点にある。

じゃあ、どうすれば良いのかということだが、まずはクラブ側が問題事象を検知するたびに、1つ1つ丁寧かつ毅然とした対応を取ることである。ファン・サポは大切であるが、ルールやマナーからの逸脱は断じて許さないという姿勢はブレないでもらいたい。

次にファン・サポ同士の相互監視、声かけであろう。お互いに気持ちよく観戦できるようにするには、ひとりひとりの心がけが重要である。一旦、世間に沁みついた「レッズ・サポ = 怖い」のイメージを払拭するのは容易ではない。ホームゲームであれば、わざわざ来場してくれたアウェイの観客に対する感謝の気持ちは絶対に必要である。「さいたまスタジアム」で気持ちよく観戦してもらい、また来ようと思ってもらえるか、レッズ・サポは決して怖い人間ばかりではないと認識を改めてもらえるかどうかである。

そのためには、いかにもマナーの悪いファン・サポに対しては気がついた人間が注意するくらいのことも必要だろう。直接、注意するのは勇気が必要であるが、勘違いしている輩にはそれくらい厳しい態度で臨んだ方が良い。

もちろん、観客同士でトラブルが起きるのは困るので、スタジアムやクラブのスタッフを介しても良い。その場合、スタッフは決して逃げないでもらいたい。そうなると、結局はやはりクラブ側の姿勢が重要であるということになる。

正直なところ、レッズというクラブは伝統的にファン・サポに対して弱腰であり、やや甘すぎるところがあるように思う。おそらくJリーグ草創期の「お荷物」時代から地元のファン・サポに支えられてきたという「弱み」みたいなものがあるからだろう。しかしながら、コンプライアンス重視の昨今の風潮においてはクラブの姿勢こそが問われているように思えてならない。


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