小説:ジュラシックパーク (マイケル・クライトン) ~稼働テスト時のエンジニアの悪夢~

私にとって初めて読んだマイケルクライトンの小説という事もあり、とんでもなくハラハラドキドキしながら読んだ。

読んだシチュエーションが身につまされるものだった、というのも影響している。

数十年前の事なのに、仕事中も「続き読みたいジュラシックパーク読みたいジュラシックパーク読みたい…」っとなっていたのを覚えている。

まず私が惹かれたのは冒頭部分。
映画ではさらっと流されていたが、
マイケルクライトンの小説らしく、いろんなレポートや、考古学者の日常から始まり、徐々にそれらが関連しているのがわかってくる。

よくわからない(当時の印象)組織から、考古学者のもとに、恐竜の生態について何かと熱心な質問がくる。ある時期は、子供の恐竜の育て方など。一応名目は展示のため、とのことではあるのだが…。

いいかげん何だ?という時期にその組織から、とにかく一緒に来てくれ、と半ば有無を言わさず連れていかれたところが、オープン直前のジュラシックパーク。
なんと、恐竜を現代によみがえらせた、という。

琥珀に閉じ込められていた蚊が吸った恐竜の血液から遺伝子的によみがえらせたらしい。

その恐竜達がうろうろしてる広大なパークを人間が安全に見物して回れるジュラシックパークが既に作られていた。

コンピュータで完全に制御しているから、絶対に安全という触れ込みではあるが…
そんな事はコンピュータ制御システムのエンジニアなら、
誰一人信じられないだろう。

案の定、プレオープンだというのに、様々なバグが出ている。
二週間に一度位恐竜のえさになぜか、変なものがまざる、とか。
なんだか本当にありそうなバグばかり…。

当時、ある大工場で、システム稼働直前の最終的なデバッグをしていた私からすると、しゃれにならなかった。

だいたいどこも本稼働前、プレオープン時なんて、まだバグが取りきれてないはず。
なのにパークのオーナーの孫含め、大事な人間達を恐竜たちの中に入れている。

無謀。

当然、恐竜に襲われまくる。

その後いろいろあり調べてみると、
あろうことか、オスしかいないはずの恐竜が繁殖して増えている?!

オスしかよみがえらせる処理をしていないはずなのに、メスの恐竜がよみがえってしまった理由は、遺伝子を補完するために、蛙の遺伝子を使ったかららしい。
蛙は両性になる可能性がある。
そこは、遺伝子工学的なミス?

が、コンピュータでカウントしてるのに、恐竜が増えているのに気づけなかったことに関しては!完全に!基本設計レベルのミス!

システム側のミス!

ここの理由を読んだ時「あ~り~そ~う~!!!!!」っと叫んだ。

本稼働直前に基本設計レベルのミスが見つかるなんて、恐竜に襲われるよりリアルにイメージできる恐怖で背筋が凍った。

現地に置いて行かれたエンジニアにとって、限りなく現実的なホラー。
しゃれにならなすぎる。

原因がわかったとしても、もう恐竜は繁殖してしまっていて、人もパークのなかにいて、現在進行形で襲われている。

おまけに、パークのオーナーの孫含め、その人間達がどこにいるかも把握できてない。

パークの中にはカメラがたくさんあるので、人の位置もすぐわかる…
というふれこみだったのに!(カメラのない河にそって逃げていた)

パーク内部にいる人間が恐竜から逃げていくところ
などもスリリングで面白かった。

なぜか、オーナーの孫の女の子が性格悪くて応援できなかったのを覚えている。

あえて難点をあげると、この規模のシステムをたった一人の「天才プログラマー」が作っている、というところ。
このプログラマーに他の組織の息がかかっていて、途中でいなくなったので、こんな状況になっても何もできなかったのだが。

停電してバックアップ電源で復旧したときについ、人間がやらかしてしまう事なども、リアルすぎてしゃれにならない…っと震えた。

ラストの方、子供がこのコンピュータシステムを触って止めるのだけれども、いくらユーザーインターフェースがわかりやすいからって、無理があるだろう…。

映画ではとってつけたように「unixシステムは学校で使ったことある」みたいなセリフが付け加えられていた。

unixで作ってるんかーい!!(さらなる突っ込み)

何かが起こってるようで、恐竜が現代によみがえってるのがわかるまで、もスリリングだし、その後の、一体何でこうなった?というのがわかっていく謎解きのプロセスも面白い。

様々な人間達の思惑も交錯する。そして、恐竜がうじゃうじゃしてる中に放り込まれた人間たちが、どうやって生き延びるのか、誰が死んじゃうのか?という部分も面白かった。

恐竜の描写も、鳥類と共通点もあり、種類によっては俊敏で集団で狩りをするほど賢い、という当時最新の情報に基づいたもので、魅力的だった。

これ以前は恐竜というと、ゆっくりノッシノッシと歩くイメージだったので、
この小説と映画が、世の中の恐竜に対するイメージを書き換えたといっても過言ではないと思う。

数十年前にたった一度読んだだけなのが、これだけの印象が残っているのがすごい。

システムエンジニア時代の私にとって、最もエキサイティングな読書体験だったかもしれない。


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