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2022.3.21 わかめとたけのこのスープ、献立を悩むか悩まないかの選択

春の出会いもの・若竹煮の量を逆転させる感じで。ぷりぷりわかめの中に、たけのこのシャキッとした食感がアクセントになって、わかめスープなのにご馳走感です。だしにはチキンコンソメの素を少々。ごま油も使わず、あっさりお吸い物風に仕上げます。

以前、坂口恭平さんと対談したとき、人の悩みはつきつめると10個ぐらいしかない、というお話をされていて、感心してしまいました。この話は料理についても同じことがいえて。

トレンドの食や店、人の好む味は常に変化し続けます。でもこの5~60年、家庭で食卓を預かる人の悩みはほぼ変わりません。いくつか挙げてみましょうか。

1毎日献立を考えるのがたいへん
2同じ味になって飽きちゃう(マンネリ)
3味が決まらない
4家族の好き嫌いが多い(病気で食べられない食材がある)
5時間が足りない
6食材の使い切りがうまくいかない
7キッチンが狭い、使いづらい
8あと片付けがめんどう
9予算内におさめるのがたいへん

…あれ、9個で止まってしまった。でも、ほとんどの人の料理の悩みは、だいたいこの範囲に収まるのではないでしょうか。

解決法については非常に多くの食のプロたちや現場の主婦たちが考えさかんに発信しています。
私もここ数年お悩み解決レシピを作りながら、「悩みを解決しようとしているうちは、悩みは解決されないのではないか」ということを考えるようになりました。

料理に限らず、人はすぐに悩みループにはまるものです。たとえば恋人が浮気をしているのではないか、仲間から疎まれているのではないか、問題のあるご近所さんや家族…。気になりだすとその悩みにますますフォーカスするようになり、細かいことがどんどん気になり始める。これが悩みループです。

「今、みんなの目の前に見えている悩みの解決」は実際に大勢の人が悩んでいることだから需要はあります。簡単な料理、時短料理、経済料理、洗い物が少ない料理。あるいは、作る人に蓄積していく不満に寄り添うような言葉。たいがいの悩みに対する答えはほとんど出尽くしています。つまり多くの料理の悩みに対して、その道のプロは非常に真摯に応えているのです。

でもそれで、私たちの悩みは解決したでしょうか?

悩みループにはまってしまうと、悩みが細分化され過ぎてしまい、どんな解決法もフィットしなくなる。それでも私たちは悩む。悩みたいから。悩むことがひとつの仕事になってしまっているから。それを解決するには、逆説的ですが、悩み以外のことに目を向けるしかないのです。

私も偉そうにはいえません。ずっとごはん作りの悩みを抱えてきました。忙しい中で十分に手をかけた料理ができず料理がちっとも上達しない、そう悩んでいました。今こうして料理を仕事にしているぐらいだから見当違いもはなはだしいのですが、人の悩みなんてそんなものです。でも結局私の悩みを解消してくれたのは料理が上達したことではなく、心から楽しんでスープ作りに没頭したことでした。

前にも書きましたが、食べることを大切にしたいと思っているから悩むのだ、と私は思っています。食べることは必要最低限でいい、栄養さえ取れて自分の価値観でおいしければいいという人には、現代はさまざまな選択肢をくれています。でもそれだけではきっと満足できない人が、たぶん私のnoteを読んでいるのではないか。悩む真面目さをいったん捨てて、悩まない方法を一緒に考えていきたいと思い、こんなnoteを書いてみました。

今朝はわかめスープのついでに、わかめの炒め物も作っておきました。刻んだわかめをごま油で炒め、酒と醤油でサッと煎りつけます。仕上げにごまをふって。少し濃いめの味にしておくとごはんやお酒のおともによいものです。砂糖かみりんで甘みをつけたのもおいしいです。






読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。